コーヒーは眠気覚ましに効果的ですが、飲むタイミングや量、砂糖やミルクなど加えるものによってはかえって眠くなってしまうことがあります。
本記事では、眠気覚ましに効果的なコーヒーの飲み方やについて解説し、眠気覚まし以外のコーヒーの健康効果も合わせて紹介します。
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なぜコーヒーには眠気覚ましの効果があるの?
コーヒーを飲むと眠気が覚めるのは、コーヒーに含まれるカフェインに覚醒作用があるためです。
カフェインは植物由来の天然成分ですが食品では特にコーヒーとお茶に多く含まれています。
カフェインの覚醒効果のメカニズム
カフェインの眠気覚まし効果は「アデノシン」と「ヒスタミン」という2つの物質に関係があります。
疲労を感じたときに体内で産出されるアデノシンは「アデノシン受容体」にくっつくと覚醒作用のある「ヒスタミン」の放出を抑制し、体を休ませようとします。
しかし、カフェインはアデノシンによく似た形の部分があり、その部分がアデノシンの代わりに「アデノシン受容体」にくっついてアデノシンをブロックします。
するとアデノシンはヒスタミンを抑制できなくため、眠気が覚めるという仕組みです。
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眠気覚まし以外のコーヒーに期待できる効果
コーヒーには眠気覚まし以外にも健康によい効果が期待できます。
例えば、疲労感の緩和、老廃物の排出、リラックス効果などです。以下でそれぞれの効果について解説します。
疲労感の緩和
カフェインは中枢興奮・鎮痛薬として登録され薬に使われている成分でもあります。
倦怠感を減らしたり片頭痛を緩和したりする効果があり、疲労感を和らげることができます。
老廃物の排出
カフェインには利尿作用があり、コーヒーを飲むことで老廃物の排出を促すことができます。
リラックス効果
コーヒーには、種類によっては香りを嗅ぐだけでアルファ波が出てリラックスできることが、大学医学部の古賀良彦教授の実験で立証されています。*1
実験内容は、10名の女性に香りを嗅いでもらい脳波を測定するという方法で、アルファ波の増加が顕著だったのはグァテマラとブルーマウンテンです。
一方、マンデリンやハワイコナでは無臭の蒸留水と比べても変化がないという結果でした。(種類による違いの理由はまだ明らかにされていません)。
2型糖尿病を予防
1日に3~4杯コーヒーを飲んでいれば長期的には血糖値を下げる効果があります。
生活習慣によりかかる糖尿病は正確には「2型糖尿病」と言います。近年、2型糖尿病の予防に効果があるとしてコーヒーが注目を集め、世界で調査が行われています。
オランダでRob M. van Dam博士らが行った調査では「1日に7杯以上コーヒーを飲む人は、2杯以下の人に比べ2型糖尿病の危険度が2分の1になる」と結論付けられました。
日本の国立国際医療研究センターからは「コーヒーを1日3〜4杯飲む人は、ほとんど飲まない人に比べて、2型糖尿病を発症するリスクが男性で17%、女性で38%低下」と発表されています。
フィンランド国立公衆衛生研究所による調査では「1日3~4杯のコーヒーを飲むと、飲まない人に比べ糖尿病にかかる率が3割減少」
ただし、Rob M. van Dam博士らが別に行った4週間の短期的な調査では、コーヒーで血糖値の上昇が抑えられるという結果は得られませんでした。*2
つまり、コーヒーを習慣的に何年も飲んでいると糖尿病のリスクが抑えられますが、1か月や数週間で血糖値を下げようとしてコーヒーを飲んでも効果は期待できないということになります。
集中力の向上
コーヒーに集中力を高める効果はあるのでしょうか。
別府大学の研究者である矢島潤平氏らが大学生303名を対象にした研究では、コーヒーを飲んだグループはカフェインによって課題への集中力が増し、作業成績が上昇したという結果が出ています。*3
つまり、集中して仕事や勉強したいときにコーヒーを飲むのは理にかなっているといえます。
砂糖を入れると眠くなるって本当?
甘いコーヒーには砂糖やシロップなどの糖質が含まれ、飲むと眠くなることがあります。これは食後の眠気と同じ原理です。
食後に軽い眠気を感じることはだれにでもある経験だと思いますが、1つの理由は消化活動に専念しようと副交感神経が働くためです。
2つ目に、神経伝達物質である「オレキシン」の影響も考えられます。オレキシンは睡眠モードから覚醒モードに切り替える機能があります。しかし、食後に血糖値が上がるとオレキシンの分泌が減ってしまい、眠くなるのです。
つまりコーヒーでも、砂糖などエネルギーになるものが入っていれば、食後と同じように眠くなる可能性があるということです。
ただし、カフェインとブドウ糖の組み合わせにより集中力や作業記憶が増したという報告もあります。
バルセロナ大学の研究で、カフェインとブドウ糖の組み合わせを摂取した被験者は、片方だけを摂取した人や、何も摂取していない人に比べて作業をする際の脳への負担が少なかったという結果が出ています。
この作業というのは、集中力や作業記憶を必要とするものです。カフェインとブドウ糖という2つの物質の複合効果によって、作業能力やパフォーマンスが低下せず、より効率的に作業ができるという結論です。*4
眠くなる3つ目の原因としては、血糖値の急上昇と急低下が起こっている場合があり、強い眠気を感じるときは要注意です。
血糖値を急激に上げてしまうのは精製された砂糖や炭水化物などです。コーヒーでも砂糖やシロップを大量に加えれば、やはり血糖値が急上昇し、眠気につながります。
これには「インスリン」が関係しています。砂糖をたくさん入れたコーヒーは血糖値が急上昇し、インスリンが大量に分泌されます。
しかしインスリンの分泌が多すぎると今度は血糖値が急降下し、このとき強い眠気をもよおすのです。さらに血管を傷つけて高血圧から生活習慣病への入り口となることもあり、注意が必要な現象です。
まとめると、コーヒーの砂糖は、適度な量なら眠気にはつながらないが、大量に入れると副交感神経の働きや血糖値の上昇を促し、眠気の原因になるということになります。
眠気覚ましのコーヒーはいつ飲むといいの?おすすめのタイミング
昼寝をする前に飲む(研究結果あり)
「コーヒーナップ」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。
昼寝をする前にコーヒーを飲むとその後すっきり目が覚める効果があるのです。
広島大学の林光緒教授が学生を対象に行った実験では、コーヒーを飲んでから仮眠をした場合、仮眠だけやコーヒーだけのグループより、起床後1時間以上眠気が抑えられ,課題の成績も優れていたという結果が出ています。*5
カフェインの効果は飲んですぐではなく15~30分後に現れます。
昼休みなどにコーヒーを飲んでから15~20分ほどの昼寝をすると、脳の細胞が休まった上に目覚めのタイミングでカフェインの覚醒作用が働きます。
そのため、昼寝の効果が上がり、その後の勉強や仕事のパフォーマンスも上がりやすいというわけです。
9時以降に飲むと良いという意見もある
朝のコーヒーは9時以降が眠気覚ましに効果的だという意見もあります。
この意見は実証はされていませんが、米国のスティーブ・ミラー氏という当時の博士候補生が、あるブログで主張した内容が基になっています。
彼の主張を要約すると、以下のようになります。*6
- 人間の体には朝の目覚めを促す「コルチゾール」という物質があり、朝は8時~9時に向かって分泌量が最大になる。
- コルチゾールの分泌量が増えていくタイミングで、同じように覚醒作用があるカフェインを摂取するとコルチゾールと拮抗してその働きを抑えてしまう。
- そのためコーヒーを飲むなら、コルチゾールが減るタイミングにカフェインが効き始めるように時間を調整すると有効。
- 午前中でコルチゾールが減るタイミングは9時半以降。カフェインが効き始めるのは15~30分後なのでコーヒーを飲むなら9時ごろがベスト。
浅煎りのブラックコーヒーが眠気覚ましに効くって本当?
ブラックコーヒーはミルクや砂糖を加えたコーヒーより眠気覚ましに効果的だということは、よく知られていることだと思います。
砂糖や牛乳には糖質(乳糖)が含まれていて、加えれば多少なりとも副交感神経や血糖値の上昇に影響するからです。
では、浅煎りのコーヒーは深煎りに比べて眠気覚ましに効果的だというのは本当でしょうか。
結論からいうとコーヒー豆のカフェインは焙煎してもほぼ減らないため、正しくないと言えます。
焙煎が長い深煎りは浅煎りより水分が多く抜けて軽くなるため、逆に豆の重さに対するカフェインの量がわずかに高くなります。
100gの生豆には約1gのカフェインが含まれています。浅煎りなら100gが約90gに、深煎りなら100gが約80gになるので、カフェインは浅煎りが1.1%、深煎りが1.25%になる計算ですが、その差は0.15%しかありません。
つまり、同じ豆なら浅煎りでも深煎りでもカフェインの量はほとんど同じなので、眠気覚まし効果も変わらないということになります。
眠気覚ましにコーヒーを飲む際の注意点
カフェインの摂り過ぎは悪影響を及ぼす可能性がある
カフェインは、知らず知らずのうちに過剰摂取してしまうことがあります。
カフェインはコーヒーの他に緑茶や紅茶、チョコレートなどにも多く含まれています。またエナジードリンクやガムなどにもカフェインが添加されていることがあります。
カフェインを摂りすぎると、頭痛・疲労感など体にさまざまな症状が現れます。
カフェインへの耐性は個人差が大きく、明確な基準はありませんが、欧州食品安全機関(EFSA) の情報によると、健康な成人で1日あたり最大400mgが許容量とされています。*7
コーヒー1杯(150ml)のカフェイン量は、レギュラーコーヒーでおよそ90mg、インスタントコーヒーで80mgです。つまり、健康な成人なら3~4杯までが目安になります。
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コーヒーで覚ました眠気は解消される訳ではない
私たちが眠気を感じるのは、眠ることで頭や体に溜まった疲労を解消しようとしている証拠です。
コーヒーを飲むと目が覚めて元気になったような気がしますが、実際は疲れが取れたわけではありません。
カフェインが眠くなる仕組みをブロックしているためで、カフェインの効き目が切れれば再び疲労が襲ってきます。
さらに、カフェインで眠気を覚ますことが習慣化すると、何とか眠気を起こして体を休ませようと、アデノシン受容体が増加します。
これによってアデノシンは受容体と結合しやすくなり、カフェインを摂っても眠気が覚めなくなってしまいます。
カフェインに頼って無理をし続けるのではなく、かならず後で十分な睡眠を取って根本的に眠気を解消することが必要です。
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夕方以降にコーヒーを飲むと睡眠を妨げることがある
カフェインの覚醒作用は、コーヒーを飲んだ後、何時間も続くため、夕方以降にコーヒーを飲むと睡眠を妨げてしまうことがあります。
血液中のカフェインが半減するのには2~8時間、完全に分解されるのには10~20時間かかります。
カフェインは習慣的な摂取で寝つきが悪くなったり、過剰に摂ると深い睡眠を妨げたりなど、睡眠の質を悪化させてしまいます。
夕方以降はコーヒーを控え、飲む場合はカフェインレスコーヒーにすることをおすすめします。
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参考文献
*1香りが脳機能に与える効果(特別講演3)(第17回生命情報科学シンポジウム)
*3コーヒー摂取による心理生物学的ストレス反応の軽減効果の検証