コーヒーは主に中南米やアジア、アフリカで栽培されています。これは赤道に近いそれぞれの土地がコーヒーの栽培に最も適しているからです。
赤道を挟んで南北25度の帯状に広がったこのエリアのことをコーヒーベルトといいます。
しかし、ハワイのコナコーヒーのように条件が整えば、コーヒーベルト以外の地域でも栽培は可能です。(もちろん日本でも栽培できます。)
コーヒー栽培の条件とはどのようものでしょうか。
本記事では、コーヒーの栽培条件と家庭でコーヒーを栽培する方法を解説します。
ブログ管理人:山口 誠一郎
コーヒーの専門家としてTV出演。文藝春秋(文春オンライン)コラム掲載。1,000種以上のコーヒー豆をレビュー。イタリア「Caffè Arena Roma」元バリスタ。
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コーヒーの栽培条件
コーヒー豆ができる木は、アカネ科コーヒーノキ属に属する「コーヒーノキ」という植物です。
この木から収穫される実(コーヒーチェリー)を精製して種子(生豆)を取り出し、その生豆を焙煎すると私たちのよく知るコーヒー豆になります。
このコーヒーノキの栽培にとって欠かせないのが次の4つの条件です。
- 適切な雨量
- 程よい日光
- 気候
- 土壌
1.降雨量
コーヒーノキのみならず、全ての植物に必要なのが水です。
しかし、ただ雨がたくさん降れば良いというわけではありません。コーヒーノキにとって好ましいのは、年間降水量が1500mm〜2500mmほどの雨量です。
そして、コーヒー豆の栽培にとって降水量と同等に大切なのが雨が降るタイミングです。
コーヒーノキが成長する時期に雨がしっかり降ること、収穫期には乾燥していること、つまり雨季と乾季のある環境が必要です。
2.程よい日光
植物にとって雨と同様に欠かせないものは、太陽の光です。
しかし、コーヒーノキは日差しが強すぎると葉の光合成が阻害されてしまうため、日当たりが良過ぎても上手く育ちません。
程よい日当たりにするために、産地によってはコーヒーノキの周りにコーヒーノキよりも背の高い木を植えます。
この木はシェイドツリー(日陰樹)と呼ばれていて、コーヒーノキに程よい日陰を作ります。
3.気候
コーヒーノキにとっての適温は15℃〜25℃です。
コーヒーベルトのある赤道付近の気候は熱帯や亜熱帯で、コーヒーノキの適温よりも遥かに暑い地域です。
この暑い地域でコーヒーノキの栽培ができるのは、コーヒー豆の産地の標高の高さにあります。
標高の低い産地もありますが、標高500m〜2500mの高地、平均気温20℃前後の温暖な気候でコーヒーノキはよく育ちます。
しかし、コーヒーノキは寒さと霜にとても弱く、5℃を下回る日が続けばすぐに枯れてしまいます。
そのため、標高が高くなればそれだけ手間がかかります。コーヒー豆の栽培は思っているよりもずっと繊細です。
4.土壌
コーヒー豆の栽培は水捌けが良く、ある程度の保水力がある火山性の土壌が適しています。
火山性土壌は、植物の成長に欠かせない有機物、窒素やリン酸、カリウムを豊富に含んだ肥沃な土壌です。
コーヒーベルト地帯は火山帯のため、標高の高い山々にはこうした肥沃な土地が多くあります。
こうしたコーヒー豆の栽培に適した条件が全て揃っているため、多くのコーヒーの産地は赤道付近のコーヒーベルト地帯にあります。
関連→コーヒーベルトとは?属する国とそれぞれの特徴をバリスタが解説
自宅でコーヒー栽培を楽しむ
では、コーヒーベルトから外れている日本でコーヒー豆の栽培は可能なのでしょうか。
もちろん、自宅でも条件を満たせば栽培は可能です。先にも書いたようにコーヒーノキは強い日差しや、とくに寒さに弱いです。
そのため、庭などに直接植えるよりも鉢植えにした方が育てやすいです。
艶やかで厚みのある葉っぱが魅力的で、観葉植物としても人気があります。
コーヒーノキの入手方法と価格
まずはコーヒーノキの入手方法です。観賞用としての人気も高い植物なので手に入りやすく、ホームセンターや園芸店、最近では100円ショップでも販売しています。
価格は100円ショップを除けば、2000円前後から鉢や木の大きさで値段が変わります。
フリマサイトでも販売されています。増え過ぎて株分けされたものなどが出品されています。
そのため、ホームセンターや園芸店よりも格安で手に入ります。
自宅でのコーヒーノキの育て方
1.栽培環境
コーヒーノキは耐陰性が高いので完全室内栽培でも十分に育ちます。しかし、日照不足になると木が細くなります。
葉の色も落ちてしまうので、できるだけ明るい場所で育てましょう。冬以外は外に出した方が元気に育ちます。
その場合は直射日光に当て過ぎないように注意が必要です。
また日本の夏は暑すぎるので、外に出す場合は遅霜が降りなくなり、暖かくなってきたころから、徐々に外気に慣らしてください。
強い直射日光も苦手なため、真夏は明るい日陰での生育がおすすめです。
2.土
コーヒーノキは有機物を多く含んだ土を好みます。しかし、腐葉土や堆肥を多く含ませるとコバエなどの虫が発生しやすくなります。
そのため、観葉植物用の普通の培養土に腐葉土や堆肥を10%〜20%ほど混ぜることをおすすめします。
水はけが良い土壌を好むので、そうなるような園芸素材も混ぜてください。
3.水やり
土が乾いたら、鉢の底から水が流れ出るまでたくさんの水をあげてください。
コーヒーノキは春から秋にかけての生育期に水切れをすると葉が落ちます。しかし、あげ過ぎても根腐れをおこすので加減が必要です。
冬は越冬しやすくするため、土が乾いてから水をあげてください。
葉のお手入れは欠かさずにしてください。とくに葉の裏はカイガラムシやハダニが発生します。
寄せ付けないためには霧吹きで濡らしたり、湿ったタオルなどで優しく拭いてください。
4.鉢植え
コーヒーノキは根詰まりすると葉が枯れます。
水を吸い込まなくなるか、もしくは1、2年ごとにひとまわり大きな鉢に植え替えてください。
100円ショップなどでミニ観葉植物として売っているものも鉢が小さいので、植替えが必要です。
気温が上がる5月から7月が植替えには良い気候です。
5.剪定
大きく育てない場合には、適度に剪定をした方が良いです。
コーヒーチェリーを収穫したい場合は、1m以上の大きさになるまで剪定はしない方が良いでしょう。
自宅で栽培したコーヒーを飲む
コーヒーを上手に生育できれば3年〜5年ほどで実をつけます。
春ごろに葉の付け根に、爽やかなジャスミンの香りに似た白い花をつけます。
その後、小さな緑色の実をつけ、半年ほどかけて成長し、冬に真っ赤なコーヒーチェリーになります。十分に熟したら収穫できます。
自宅産コーヒーを精製する
コーヒー豆はコーヒーチェリーの種子の部分なので、乾燥させて種子を取り出す作業が必要です。
コーヒーチェリーをそのまま自然乾燥させて、種子(生豆)取り出せば、ナチュラルプロセス(乾燥式、非水洗式)で精製された生豆になります。
そのほかに水に一晩つけておいて、外皮と実を取り除いてから天日で干す方法もあります。(ウォッシュト(水洗式))
その場合は果実ごと干したものよりも、ややスッキリした味わいになります。
関連→コーヒーの精製方法とは?ナチュラル、ハニーなど発酵で変わる味の特徴を解説
コーヒーチェリー
コーヒーチェリーはそのまま食べることもできます。
ほんのり甘くておいしい果実です。栄養価が高く、近年スーパーフードとして注目されています。
とはいえ、コーヒーチェリーはそのほとんどが種(生豆)なので、食べるられる果実部分はほぼありません。
焙煎
そして、取り出した生豆は焙煎する必要があります。焙煎機を持っていない家庭ではフライパンで焙煎できます。
弱火で10分から20分ほどフライパンを動かしながら、好みの煎り具合まで煎ります。
焙煎されたコーヒー豆を挽き、コーヒー器具で抽出すれば自宅産の美味しいコーヒーが味わえます。
最近では家庭用でも高性能の焙煎機が登場しています。
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コーヒーのビニールハウス栽培
栽培条件の管理のしやすさから、ほとんどの日本のコーヒー農園ではビニールハウスを利用してコーヒーの栽培しています。
家庭での簡易的なビニールハウスでも栽培は可能です。夏場の高温対策と冬場の寒さ対策に気を使えば、ビニールハウスでの生育はそれほど難しくはないです。
適度に風通しを良くすることで元気なコーヒーノキが育ちます。
しかし、コーヒーノキはそのままにしておくと7、8mほどに成長するので、ビニールハウスにあわせた剪定が必要です。
日本のコーヒー農園
家庭でも楽しめるコーヒー豆の栽培ですが、やはりコーヒーノキは温暖な気候を好みます。
そのため、国産のコーヒー豆を栽培している農園は、沖縄や小笠原など日本の南側にあります。
野瀬農園 Nose's Farm Garden
野瀬農園は小笠原諸島父島にあります。小笠原の温暖な気候のなかで、コーヒーのみならずマンゴー、バニラ、パッションフルーツなど1年を通して南国のフルーツが育てられています。
3月〜4月ごろはコーヒーの花が、10月〜12月ごろは真っ赤に熟したコーヒーチェリーが見学できます。
ヒロコーヒーファーム
ヒロコーヒーファームは約30年前にオープンした、沖縄国頭郡東村にあるコーヒー農園です。
1度は台風の影響で壊滅してしまった農園を地元の方の協力を得て立て直しました。農園の敷地内にはフォトジェニックで可愛いカフェがあります。
ここで栽培されたコーヒーを飲めるほか、持ち帰り用のコーヒー豆を購入することもできます。
やまこうファーム
岡山市内の温室ハウス内で国産コーヒーの栽培、初収穫に成功した「やまこうファーム」。
国産コーヒーの普及を積極的におこなっています。自社農園で国産コーヒーの栽培に成功し、ノウハウ、土、苗を販売していています。
その技術で「誰でも国産コーヒ農園のオーナーになれる」国産コーヒーの普及、応援プロジェクトを運営しています。
また、誰もがコーヒーの木のオーナーになれるプロジェクトも募集中です。
スコーコーヒーパーク
長崎県大村市寿古町にある日本初の観光コーヒー農園「スコーコーヒーパーク」。
約50年前、たった1本の苗木から店長が夢にまで見たコーヒーの栽培を始めました。
今では200本ほどのコーヒーノキを約300坪の大温室で育てています。隣接するレストランではそこで栽培されたコーヒーを使って作られたものを味わえます。
元気なコーヒーノキを育てるためには、栽培条件や方法についての知識が必要です。
家庭でコーヒーノキの栽培を始める前に、ぜひ1度日本のコーヒー農園に足を運んでみてください。