本記事では、ナチュラルやハニープロセス、新しい精製方法「アナエロビック・ファーメンテーション」などコーヒーの精製方法を紹介します。また、発酵で変わる魅力的な味わいを精製方法ごとに解説します。
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コーヒーの精製と発酵
コーヒーの精製とはコーヒーチェリーから必要のないものを取り除き、コーヒー豆(生豆)の状態にすることをいいます。
コーヒーチェリーは外側から外皮→果肉→粘液質(ミューシレージ)→内果皮(パーチメント)→銀皮→種子(生豆)となっており、コーヒー豆となる生豆は1番内側の種子の部分です。
この種子(生豆)を取り出す方法を精製といいます。
精製方法はコーヒーチェリーが栽培されている土地や気候によって変わります。そして、コーヒーを精製する過程で必ず発生する発酵は、個性的なコーヒーの味わいを得るうえでとても重要な役割を果たしています。
採れたてのコーヒーチェリーからコーヒー豆になる過程で、どのようにしてコーヒーに独特で魅力的な味わいをもたらすのでしょうか。
これから、精製方法の違いと発酵について6つ紹介します。
コーヒーの精製方法とは?
1.ナチュラル(非水洗式・乾式)
ナチュラルは収穫したコーヒーチェリーを広げて天日干しにした後、乾燥した果実から生豆を取り出します。この方法は最もシンプルで伝統的な精製方法です。
乾燥期間は約1ヶ月。大量の水の確保ができない乾季のある地域に適しています。
果実をつけている時間が長く、熟して自然に発酵が進むのが特徴です。その味わいは熟した果実の味が浸透することで、華やかなベリーや香り豊かなワインの果実味が感じられます。
この独特な風味を守るためには、乾燥前にコーヒーチェリーを選別がとても重要です。乾燥が進むと果実は全て黒くなります。
そのため、見た目では選別が難しくなり、欠点豆や未熟豆が取り除き難くなります。そして、欠点豆が混ざったコーヒーは、香りや風味に濁りがでてしまいます。
シンプルゆえに天候にも左右されやすいこの精製方法は、ナチュラル特有の独特な風味を守るために丁寧な管理が求められる方法でもあります。
2.ウォッシュト(水洗式)
ウォッシュトはその名前のとおり水を使って精製する方法です。
収穫したコーヒーチェリーを水に浮かべます。そして、パルパーと呼ばれる果肉除去機を使い外皮と果肉を外します。
この時に水の浮力により選別されます。果肉を外されたパーチメントは、その周りを粘着質のミューシレージに覆われています。
それを剥がすために水につけて1日〜2日ほど発酵させ、攪拌させながら粘着質を剥がします。ミューシレージが剥がれたパーチメントを水で洗い流したのち、乾燥機もしくは天日で乾かします。
ウォッシュトは大量の水を使用したとても工程の多い精製方法です。多くの工程を踏み、丁寧にミューシレージを除去し乾燥させたことで、雑味がなく爽やかでクリーンな味のコーヒーが生まれます。
この方法で精製されたコーヒーは飲みやすく、多数の方に好まれます。天候に左右されることもないため、安定した品質が保たれます。そのため、最も一般的で広く行われている精製方法です。
3.パルプドナチュラル(半水洗式)
パルプドナチュラルはセミウォッシュトとも呼ばれている精製方法で、精製工程を少なくするために生まれました。
外皮と果肉を外すまでの工程はウォッシュトと同じです。しかし、次の発酵曹につける工程がパルプドナチュラルにはありません。
ミューシレージをつけたまま乾燥させ、自然に発酵させます。ナチュラルとウォッシュトの中間のような精製方法です。
乾燥期間は約20日です。その味わいも中間で、ナチュラルほどではないが甘さや果実味を感じられ、ウォッシュトほどではないが爽やかな酸味が感じられます。
そして、ミューシレージを残す割合によってバリエーション豊かな味わいを楽しめることがパルプドナチュラルの特徴です。
その種類や特徴については次のハニープロセスで説明します。
4.ハニープロセス(半水洗式)
ハニープロセスは主にコスタリカで発展しています。精製方法は基本的にパルプドナチュラルと同じです。ミューシレージを残す割合によって、その味わいに多彩な変化が生まれます。
レッドハニー
ミューシレージ100%。ミューシレージを落とさず乾燥させる精製方法です。ミューシレージは粘着質です。
そのため、乾燥させる工程で付着しないように注意が必要です。果肉もある程度残っているので、欠点豆が出てしまわないよう丁寧な撹拌作業が必要です。
乾燥期間は約1ヶ月。味わいはナチュラルに近く、ベリーやワインのような甘さと果実感が特徴です。
ブラックハニー
ミューシレージ100%。精製方法はレッドハニーとほとんど同じです。乾燥方法が異なっていていて、ブラックハニーは日陰をつくりゆっくりと乾燥させます。
乾燥期間は約1ヶ月。こちらも味わいはナチュラルに近いです。しかし、レッドハニーよりも糖度が高いので、その味わいも強くでます。
イエローハニー
ミューシレージ25%〜50%。粘着質除去機(ミューシレージリムーバー)でミューシレージを調節して乾燥させます。ほのかな甘味と酸味があり、バランスがとれた味わいに仕上がります。
ホワイトハニー
ミューシレージ10%以下。ほぼ全てのミューシレージをリムーバーで除去します。そのため味わいはウォッシュトに近く、ほんのりした甘さのなかに爽やかな酸味が広がります。
ハニープロセスで作られたコーヒーの味わいは、ミューシレージの割合が多ければ多いほど甘さが強く残ります。
また、ハニープロセスは見た目の色で分けることがあり、レッドハニーで精製していても見た目でイエローハニーに分類されることもあります。
5.スマトラ式
インドネシアのスマトラ島で生まれた精製方法です。雨の多い土地ならではの方法で、乾燥時間を短くするため半乾きの状態でパーチメントを脱穀するのが最大の特徴です。
収穫されたコーヒーチェリーはウォッシュトと同様に外皮と果肉が除去されます。そして、ミューシレージを残した状態で予備乾燥を行います。
水分が20%〜30%の半乾きの状態でパーチメントを脱穀します。完全に生豆の状態にしてから本乾燥をします。
半乾きの柔らかい状態で脱穀するため生豆がとても傷つきやすく、脱穀の工程には丁寧な作業が必要な精製方法です。
この精製方法と雨の多いスマトラ島特有の気候が、独特の力強い風味を生み出します。
スマトラ式で精製されたコーヒーは、酸味は穏やかでしっかりとした深みのあるコク、森の湿った土やスパイシーなハーブを思わせる力強い味わいに仕上がります。
6.アナエロビック・ファーメンテーション(嫌気性発酵)
近年注目されいる精製方法が、2014年に発表された新しい精製方法「アナエロビック・ファーメンテーション」です。
ミューシレージを剥がすための発酵プロセスが、先に紹介した他の精製方法とは異なり、発酵させる段階で容器を密閉し発酵を促します。
ナチュラル、ウォッシュトの発酵プロセスは「好気性発酵」といい、酸素が得意な微生物の発酵によりミューシレージを除去する方法です。
一方で「嫌気性発酵」は元々はワインやウィスキーを発酵させる方法で、酸素がない状況を好む微生物の発酵によりミューシレージを除去する方法です。
このアナエロビック・ファーメンテーションは発酵プロセスのことを言います。そのため、そのほかの精製工程によりアナエロビック・ナチュラルやアナエロビック・ウォッシュトと呼び方が変わります。
アナエロビック・ファーメンテーションで精製されたコーヒーは、それまでの精製方法では味わったことのない独特で個性的な味わいになります。
その味はチェリーやワインのような強い果実感、シナモンのような風味も感じられます。