自宅用のコーヒー豆だけでなく、カフェなどお店のメニューでも「グアテマラ」の文字はよく見ると思います。
実は日本はアメリカに次いでグアテマラコーヒーが多く飲まれている国です。
上質なコクと甘みを兼ね備えたグアテマラのコーヒーは世界的にも定評を得ています。
本記事ではグアテマラコーヒーの特徴、美味しい飲み方や淹れ方について解説します。
ブログ管理人:山口 誠一郎
コーヒーの専門家としてTV出演。文藝春秋(文春オンライン)コラム掲載。1,000種以上のコーヒー豆をレビュー。イタリア「Caffè Arena Roma」元バリスタ。
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グアテマラコーヒーとは
「森の国」グアテマラで生産されるコーヒー
グアテマラという国名の由来は、先住民の言語の「クアウテマラン」で、意味は「薪になる木の豊かな場所」です。
国土の半分は山々が連なる高原地帯です。山がもたらす雨に育まれた豊かな森林が広がるグアテマラは「森の国」とも呼ばれています。
グアテマラのコーヒー産地は豊かな河川と湖をたたえ、300を超える亜熱帯性のマイクロ・クライメイト(局所気候)が存在します。
この気候はコーヒー栽培においても個性豊かなテロワール(風味特性)を生み出しています。
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コーヒー生産量は世界第10位を誇る
グアテマラは国土は日本の3分の1程度しかないにもかかわらず、コーヒーの生産量は世界第10位を誇ります。
グアテマラにある340の自治体のうち、204の市町村でコーヒーが生産されており、総面積は30万5千haを維持しています。
2018年、グアテマラ政府はコーヒー生産を国の無形遺産として登録しました。
コーヒーは主要な輸出農産品の 1 つで、グアテマラコーヒーの品質は世界で焙煎業者や消費者の信頼を集めています。
火山灰性の土壌で良質なコーヒー豆が多い
グアテマラコーヒーは、4000m級の火山も含むシエラ・マドレ山脈とクチュマタネス山脈一帯で栽培されています。
火山灰性の土壌はコーヒーの栽培に最適で、森に育まれた肥沃な土地がコーヒー豆の良質な風味を生み出しています。
国内のコーヒー品質を高めるグアテマラのAnacafé
グアテマラ全国コーヒー協会 (Anacafé) は、グアテマラのコーヒー産業を支援する目的で1960年に設立されました。
国内では輸出ライセンス取得*や生産技術の向上など、品質を高める取り組みを行う一方、消費国に向けてはグアテマラコーヒーを1つのブランドとしてPRを行うなど宣伝活動も行っています。
*輸出ライセンスとは、買い手(商社、焙煎業者)とコーヒー生産者が直接やりとりして生豆を輸出入できる認証のこと。
グアテマラコーヒーの特徴
コクのある味わい・チョコレートのような風味が特徴
グアテマラのコーヒーは、深いコクと濃厚な甘み、産地によって様々な果物の香りが特徴です。
チョコレートやキャラメルのような甘みが豊かで、後味まで続きます。
コクはしっかりしていてもクセがなく、飲みやすいコーヒーが楽しめます。
フルーティーな酸味も楽しめる
グアテマラコーヒーは、明るく鮮やかな酸味も特徴です。
酸味の強さは各産地で変わってきますが、オレンジやレモンといったさわやかな柑橘系の酸味や、リンゴやベリーのようなフルーティーで柔らかな酸味が感じられます。
グアテマラコーヒーの等級
グアテマラでは、コーヒー豆が栽培された標高の高さで7つのグレードに分けられます。
- 標高1,350m〜:SHB(ストリクトリー ハードビーン)
- 標高1,200〜1,350m:HB(ハードビーン)と
- 標高1,050〜1,200m:SH(セミ ハードビーン)
- 標高900〜1,050m :EXP(エクストラ プライム ウォッシュド)
- 標高750〜900m:PW(プライム ウォッシュド)
- 標高600~750m:EGW(エクストラ グッド ウォッシュド)
- 標高0~600m :GW(グッド ウォッシュド)
標高900mを超えると、徐々にチョコレートやナッツなどの個性があらわれ、1350mを超えるとナッツなどに加え、ワインやベリー系の風味も感じられます。
このように、標高の高い場所で栽培したコーヒーはフルーティーな甘い酸味、ナッツやフルーツなどの風味を持ちます。
もっとも標高が高い場所で栽培された「SHB規格」のコーヒーは高値で取引されます。
グアテマラコーヒーの栽培環境
国土の3割が火山に囲まれている山岳地帯
グアテマラの国土は、南部の山岳地帯と太平洋海岸地帯、北部の平原地帯の3つに分けられます。
グアテマラの森林率は3割で、南部の山岳地帯は火山を含み、コーヒー産地もこの地帯に広がっています。
コーヒーベルトに属しているグアテマラですが、高地は涼しく、一年を通して20℃前後です。
穏やかで住みやすい気候からグアテマラは「常春の国」とも呼ばれ、コーヒーの生育条件にも適しています。
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昼夜の寒暖差が大きい栽培環境
「常春の国」グアテマラですが、標高が高いコーヒー産地では昼夜の気温差は大きくなります。
昼夜の気温差が大きいとコーヒーの甘みが強くなると言われますが、これは気温が下がったときにコーヒーチェリーが糖分をため込もうとするためです。
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シェードツリーを使った日陰栽培を行っている
グアテマラのコーヒー農地の約98%は、アグロフォレストリーによる木陰栽培を行っているのが特徴です。
アグロフォレストリーとは森林の多様性を保った農業のことです。
グアテマラには1996年に制定された「森林法」という法律があり、コーヒーのアグロフォレストリーにおいてもこの法律が適用されています。
第53条では、伐採や間伐(かんばつ)について規定しています。コーヒー農園のシェードツリーになる木でも、種類によっては薪や木材などの副産物に利用できます。
グアテマラは、豊かな森を保全するための法制度が整備されているといえます。
8つの産地でアラビカ種のコーヒーが栽培されている
アンティグア(Antigua)
アンティグア(Antigua)は、グアテマラで最も有名なコーヒー産地の一つです。
ここで生産されたコーヒー豆は、フルボディのワインやチョコレートのようなコクを持ち、スパイシーさと上質な酸味を兼ね備えます。
標高1400m〜1700mの高地でブルボン、カトゥーラ、カトゥアイが栽培されます。
アンティグア産のコーヒー豆は浅煎り〜深煎りまで、どんな焙煎度合いでも個性的なフレーバーを楽しめるのが特徴です。
偽物が出回るほど、コーヒーのおいしさが世界的に認められています。
引用:土居珈琲
本物のアンティグア産コーヒーは、麻袋に「GENUINE ANTIGUA COFFEE」の文字が記載されています。
関連→土居珈琲のコーヒー豆「グァテマラ・カペティロ農園」の正直な感想
ウエウェテナンゴ(Huehuetenango)
アンティグアと並んで「優れたコーヒー産地」と定評を得ているウェウェテナンゴ。
バターを思わせる濃厚なコク、チョコレートやフルーツのような甘味が複雑に絡み合うようなおいしさが特徴です。
2022年に開催されたコーヒーの国際品評会「カップオブエクセレンス(COE)」では、ウェウェテナンゴ産のゲイシャが上位を独占しました。
直近3年で見ても、全エリアの中で「COE受賞歴最多」という輝かしい功績を残し、ゲイシャの他にブルボン、ティピカ、パカマラなどでも入賞しています。
ちなみに、世界で最も有名なコーヒー農園の一つ「グアテマラ エル・インヘルト農園」もウェウェテナンゴに位置します。
関連→【COE】カップオブエクセレンスとは?歴代や通販で買えるおすすめも紹介!
サンマルコス(San Marcos)
8つのエリアの中でもっとも温暖なサンマルコス。
キャラメルやチョコレートのような甘い香りと、フローラルな香りが複雑に絡み合うのが特徴です。
酸味が少なく、クセのない味でオーソドックスなコーヒーを楽しめます。
アティトラン(Atitlán)
アティトラン産のコーヒーはスターバックスでも販売されていたので、ご存じかもしれません。
ナッツやチョコレートのようなコクのある甘みに、ブルーベリーやオレンジなど柑橘系のフレーバーも兼ね備えます。
柑橘系のキレの良い酸味とフルボディのコクが特徴です。
コバン(Cobán)
雨が多く、年中霧に覆われているコバン。
ミディアムボディのワインを思わせる優しいコクと、フルーティーな風味、マイルドな酸味のあるコーヒーが生産されます。
フライジャネス(Fraijanes Plateau)
フライジャネス高原のコーヒーは、アンティグアのコーヒーと比較されることが多く、非常にバラエティ豊かなフレーバーを持ちます。
アンティグアに似た深いコクと豊かな風味を兼ね備えることから、「本物のアンティグアコーヒーに近い」と言われます。
ニューオリエンテ(New Oriente)
1950年代からコーヒーが栽培され、古い歴史を持つニューオリエンテ(ヌエボ オリエンテ)。
独特の酸味が強く、浅煎りや中煎りだと若干飲みにくいコーヒーも。
フルシティローストに焙煎されたコーヒー豆なら、チョコレートのような風味が楽しめ、後味にチェリーのような優しい酸味を感じることができます。
アカテナンゴ(Acatenango)
豊富なミネラルを含んだ土壌を持つ「アカテナンゴ」のコーヒーは、オレンジなど柑橘系のフルーティーな甘さと酸味が特徴です。
標高が高いため、複雑なフレーバーを持つコーヒーが多いです。
直近では同エリアのゲイシャ種がCOE受賞を果たしています。
関連→ゲイシャコーヒーおすすめ29選!華やかさと繊細な甘みを楽しもう
グアテマラコーヒーの美味しい淹れ方
グアテマラコーヒーの味わいは、淹れ方でさまざまに変わります。すっきりした酸味が好みなら、ペーパードリップが最適です。
特に浅煎り、中煎りのグアテマラは、クリアな酸味と適度なコクがバランスよく引き出せます。
深煎りのグアテマラでは、フレンチプレスの使用もおすすめです。しっかりしたコクとチョコレート感のある甘みを際立ちます。
また、水出しコーヒーを作ると、苦味や雑味がほとんどなくボディと甘みがより強く感じられます。
グアテマラコーヒー購入時のチェックポイント
コーヒー豆の鮮度
高品質なグアテマラのコーヒー豆の風味を損なわないために、焙煎後の鮮度はとても重要です。
コーヒーは焙煎日の数日後から数週間が飲みごろです。購入時に焙煎日を確認し、できる限り新鮮な豆を選びましょう。
焙煎度合い
グアテマラコーヒーの焙煎度合いは、中煎りから深煎りまでさまざまです。焙煎度合いによって大きく変わるのは酸味の強さです。
中煎り~シティロースト(中深煎り)までは、果物のような香りや酸味をはっきり感じることができます。
フルシティロースト(深煎り)では、チョコレートのような香りとコクが中心で、酸味は控えめです。
グアテマラコーヒーの歴史
1750年頃に初めてコーヒーが持ち込まれる
コーヒーの木がアメリカ大陸に運ばれたのは18世紀のことです。
グアテマラには1700年代半ばまでにはイエズス会の修道士によってコーヒーの木が持ち込まれていたことがわかっています。
ナポレオン戦争の後、低迷するグアテマラ経済回復のための「換金作物」としてコーヒーが栽培されました。
1850年頃からコーヒー産業が急成長
グアテマラ政府は1832年から、生産割当額に対し税金を免除したり、賞金を与えることでコーヒー生産を奨励し始めました。
当初は国内で消費されていましたが、1850年にコーヒー輸出の最初の記録が残っています。
1860年、イギリスで人工染料が発明され、それまで天然染料の藍などを輸出していたグアテマラの経済は危機に陥りました。
染料に変わる輸出品としてコーヒー産業が急成長を始め、グアテマラ全土に栽培が広がっていきます。
1900年ごろには、グアテマラコーヒーは品質で定評を得るようになり、アメリカやヨーロッパでも注目されます。
1969年にAnacafé設立。グアテマラコーヒーというブランドを築く
コーヒー産業はグアテマラの政策に大きな影響を与えるようになります。
1928年に、政府・農業団体・グアテマラ商工会議所の代表で構成されるコーヒー中央局が設立されました。
しかし、翌年の世界恐慌と第二次世界大戦によりコーヒーの輸出が滞り、グアテマラのコーヒー産業も打撃を受けます。再びコーヒーの価格が安定してきたのは戦後のことです。
1960年には全国コーヒー協会 (Anacafé) が設立されました。
1989年にコーヒーの大暴落が起きた後も、Anacaféは品質で知られたグアテマラコーヒーを欧米諸国にPRし、グアテマラコーヒーというブランドを築くことで差別化に成功しました。
現在、Anacaféは気候風土のバラエティ豊かなコーヒー産地を8つのエリアに分け、12万人の生産者を支援しています。
グアテマラのコーヒー産地で起きている2つの問題
1.急増するコーヒーの生産コスト
グアテマラコーヒーの生産者の半分近くは、家族経営の小さな農家です。
生産量では世界第10位を誇るグアテマラですが、ここ数年は生産コストの急上昇によりコーヒーの生産量が減り続けています。
生産コストが上がった原因の1つは「世界的な肥料の値上がり」です。
もう1つは「人件費の高騰」です。
グアテマラでは、とうもろこしの価格上昇が原因で物価が上がり、インフレが続いています。
多くの生産者は肥料が買えず、人手が必要な収穫の時期に十分な人数のピッカー*が雇えないため、収穫できるコーヒー豆が減り続けているのです。
2021年は前年比で8.6%も減少しており、今年(2023/2024年)の収穫量は、前年から1%、2年前から3%の減って343万袋になると予想されています。
コーヒーを栽培していた農地で、コーヒーよりも収益性の高い作物に置き換えることも、コーヒー生産の減少に影響を及ぼしています。
*ピッカー(摘み手)とは、コーヒーチェリーを摘み取る人のこと。
2.コーヒー栽培をあきらめた農家が不法移民に
グアテマラではコーヒーの農地を放棄する人が相次いでいます。
グアテマラの都市部へ働きに出る人もいますが、米国への不法移民が急増し、2014年から2019年の5年間で10万人から2倍の20万人になりました。
不法移民として逮捕された人が最も多いのは、ウエウエテナンゴなどコーヒー産地の3県で、しかも高地の農村出身者です。
コーヒーの栽培をあきらめる理由の1つは、コーヒー価格の下落です。
放棄の理由はコーヒー価格の下落、生産コストの上昇、干ばつ
コーヒーの市場価格は、2012年の高騰後、機械化が進むブラジルでの安価なコーヒーの増加、米ドル高、ベトナム・ホンジュラス・コロンビアでの生産増加により下落しました。
品質で勝負のグアテマラコーヒーでさえも、一部のスペシャリティーコーヒーを除き、市場に出回る一般のコーヒーは、国際市場の価格の影響を免れることはできないのです。
コーヒーの農地を放棄する理由は、コーヒー価格の下落以外に、生産コストの上昇と気候変動による干ばつです。
ある試算では、温暖化による干ばつでコーヒーが不作になれば、生産コストが1.6倍に増加すると出ています。
生産コストの増加により、ほとんどの農家は十分な人手を雇えず、全体の品質低下につながっています。
関連→スペシャルティコーヒーとは?基準や定義を簡単にわかりやすく解説
コーヒーで収益を得られなければ、農地を離れて働きに出るしかない
グアテマラの貧困率は40%です。国全体でも貧しい人が多いのですが、コーヒー生産の担い手である先住民に限ると貧困率は80%に跳ね上がります。
グアテマラの高地の気候がコーヒー生産に向いているのは事実ですが、山で暮らしながら収入を得るにはコーヒーを植える以外に選択肢がないというのも事実です。
もともと貧しいうえにコストが急増すれば赤字になり、山を離れて働きに出るしかないのです。
グアテマラのみならず、世界中のコーヒー生産者が赤字になる根本的な構造は、コーヒーの価格が決まる仕組みにあります。
世界で取引されるコーヒーの価格には「生産コスト」が反映されていない
世界で取引されるコーヒーの価格には、農場の生産コストが反映されていません。
コモディティ市場という取引の場で、投資家たちや市場が収穫量や生産量の情報を元にして、コーヒーの価格が決まるためです。
肥料や人件費が上がったり、気候変動による病害虫・干ばつ・ハリケーンに対応するためコストをかけても、生産者はそれを元にした価格をつけられないのです。
この大きな構造は、コーヒー生産が奴隷労働で成り立っていた植民地時代に作られ、現在でも基本的に変わっていません。
フェアトレードも農家を継続的に守ることはできていない
スターバックスやネスレなど大手コーヒー企業が参加するプレミアムコーヒーや、フェアトレードコーヒーといった方法があります。
そういった価格の決め方により、農家は年によって一定の利益を得られることはありますが、継続的なコーヒー生産の維持には繋がっていないのが現状です。
国際的なフェアトレードの機関「フェアトレード・インターナショナル」が決めた認定フェアトレードコーヒーの最低価格は農家に直接ではなく輸出会社に支払われるためです。
例えば、2019年に適用されていた最低価格は1ポンドあたり1.40ドルでしたが、グアテマラの多くの農家が受け取った金額は約1.20ドルで、生産コストよりも大幅に下回っていました。
フェアトレード・インターナショナルでは2023年8月に最低価格を1.80ドルに引き上げましたが、コスト増には追いついていません。
グアテマラのコーヒー農園をスターバックスが支援
新しいコーヒーの木を5,000万本以上配布
スターバックスはコーヒーのフェアトレード以外にも、小規模農園を支援する様々な取り組みを行っています。
その1つは、苗木の配付です。国際NGOであるCIや農業ビジネスの会社ECOMなどと協力し、コーヒーの苗木を配る事業をサポートしています。
病気に強い品種の苗木を配付すれば、農家は病気の木や老木からの植え替えができます。
事業は2016年夏にスタートし、グアテマラ、エルサルバドル、メキシコにおいて目標の1億本のうち5000万本の配布を達成しています。
苗木を受け取った人は2万1千人、植えられた面積は約9,000haで、3つの国のコーヒー栽培面積の1%近くになります。
病気に強いコーヒー品種「マルセレサ種」を提供
「マルセレサ」はさび病に抵抗力を持ち、風味の良い酸味を持つコーヒーの品種です。
ハイブリッド・ティモールとブルボンの突然変異であるビジャサルチを掛け合わせて開発されました。
この品種は、特に標高がある程度高い場所で栽培すると、フローラルで質の良い酸味が現れます。
グアテマラ、メキシコ、エルサルバドルの3国では、マルセレサの苗を育てる施設が16か所あります。
普段の管理は上記の協力団体が行い、スターバックスはサポートチームを通して、新しい品種の栽培方法など、グアテマラなどの農園を支援しています。
関連→アラビカ種とは?有名な16種類の品種の特徴を解説|味や香りが分かる
小規模農家に対して870万ドル(12億円)を低利融資
スターバックスは、コーヒー農家への低金利の融資も行っています。
小〜中規模の困窮している農家が対象になり、これまでに870万ドル、11,000件以上の融資を行ってきました。
主な融資先は中米に集中しており、グアテマラでは米国に拠点を置く非営利融資団体ルート・キャピタルとフェアトレード・アクセス基金を通じて融資を行ってきました。
グアテマラ国内のコーヒー事情
様々な問題を抱えているグアテマラですが、国内のコーヒー消費量増加など、これまでにない動きを見せています。
コーヒー消費が急増している
昔からグアテマラの人々が主に飲むコーヒーと言えば、輸入された安いインスタントコーヒーでした。
グアテマラのコーヒー豆はほぼ100%輸出向けで、グアテマラの人々が自分たちが栽培したコーヒーを飲むことはありませんでした。
しかし、ここ最近は風向きが明らかに変わり、グアテマラの都市部では近年カフェが増え続けています。
エスプレッソマシンを購入したり、自分で焙煎と販売を始める若者が増え、サードウェーブの講習会も頻繁に開かれるようになりました。
ANACAFEの報告では、⾼品質なコーヒー豆の国内消費が10年ほど前から急激に伸びており、以前は輸出されていたコーヒー豆の10%が新しく国内消費に振り向けられていることがわかります。
新しくできたカフェの中には、自家農園で栽培したコーヒー豆を使ってコーヒーを提供する店もあります。
コーヒーを輸出業者に卸すだけではなく、自分たちで焙煎して国内で販売できることは、農園の安定にもつながります。
各地域のカフェでは地元産のコーヒー豆を使うところが多く、地域ごとの風味特性を味わうことができます。
以下では、アンティグアの代表的なカフェを紹介します。
アンティグアのおしゃれなカフェ
Cafe Condesa (カフェ コンデサ)
カフェコンデサはコーヒー産地のアンティグアの市街地で25年以上地元の人に愛されているカフェです。
緑あふれる中庭にオレンジを基調としたカラフルな店内が印象的で、広々とした空間でゆったりと過ごせます。
マグカップにたっぷり入った「カフェ・アンティグア」を初めとしたコーヒーはもちろん、食べ応えのあるデザート、新鮮な野菜や果物をふんだんに使ったグアテマラの食事メニューも豊富で目移りしてしまいそうです。
アンティグア産100%のコーヒー豆も販売し、旅行者にとってもまず立ち寄ってみたいカフェです。
Bella Vista Coffee
Bella Vista Coffeeは、屋上のテラス席からアンティグアの山々を360度眺められるカフェです。
直営のコーヒー農園を持ち、自家焙煎をしたコーヒーを、エスプレッソやカプチーノなど色々なコーヒーメニューで提供しています。
サンドイッチやパンケーキもおいしいので、景色を眺めながら軽食を楽しむのもよいでしょう。
おしゃれでエコな缶に入ったコーヒー豆も直販していて、お土産の調達にもぴったりです。
スターバックス
スターバックスがアンティグアにオープンした支店は、店舗自体が小さな博物館のようです。
1930年代に建てられた私邸を改装して作られており、地元のアーティストが自然素材で製作したモチーフやグアテマラの太古の人を象徴した壁画が色鮮やかに描かれています。
使用されるコーヒー豆はグアテマラ産だけでなく世界のさまざまな豆で、ドリップやケメックスなど色々な抽出方法で提供されています。
美味しいグアテマラコーヒー楽しもう!
今回は、グアテマラコーヒーの特徴から歴史、国内のコーヒー事情まで解説してきました。
以下の記事では、実際に飲んだ美味しいグアテマラコーヒーを紹介しています。