コーヒーを飲み過ぎると不眠や不安、下痢などの悪影響を及ぼす可能性がありますが、一体どれくらい飲めば体に悪い影響が出るのか?
結論から言うと、ドリップコーヒー1杯(150ml)に約90mgのカフェインが含まれているため、1日4杯程度までなら飲んでも問題ないと言えます。
また、適量のコーヒーを飲むことで健康に良い影響があることが様々な論文で報告されています。
本記事では、コーヒーに含まれるカフェインやクロロゲン酸(ポリフェノール)がもたらす効果をわかりやすく解説していきます。
タップできる目次
コーヒーに含まれるカフェインの効果
コーヒーを飲み過ぎると健康に害がおよぶ可能性がありますが、適度に摂取する限り、コーヒーには健康に良い効果も期待できます。
まず、カフェインには眠気を覚ます効果があります。これは、カフェインが眠気を引き起こすアデノシンという物質の働きをブロックするためです。
また、カフェインには鎮痛作用や疲労回復効果もあり、風邪薬や解熱鎮痛薬にも使用されることがあります。
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コーヒー飲み過ぎるとどうなる?
コーヒーは一般的に安全な飲み物ですが、カフェインの摂取量が多いと個人によって身体的な不調を感じることがあります(症状は個人差があります)。
以下では、カフェインの過剰摂取によって引き起こされるかもしれない健康への悪影響を見ていきましょう。
不眠などの脳神経系への悪影響
カフェインは化学物質であり、薬物としての性質も持っています。
カフェインを過剰に摂取すると、眠気を覚ます効果が発揮されて、眠れなくなることが広く知られています。
また、カフェインの過剰摂取によって神経が過剰に刺激されると、興奮や不安などの異常な精神状態が生じる可能性があります。
その他にも、目まいや心拍数の増加、震えなどの症状が現れる場合もあります。
吐き気や下痢などの消化器への悪影響
カフェインを過剰に摂取すると、神経が過度に刺激されることで消化器官にも影響が及ぶ可能性があります。
その結果、下痢や吐き気、嘔吐などの症状が現れることがあります。
カフェイン中毒
カフェインの中毒性は、アルコールやタバコと比較して比較的弱いとされています。
カフェインは中枢神経に直接作用するため、大量のコーヒーを一度に摂取すると手足の震えや不安感などの症状が現れることがあります。
ただし、これらの症状も個人差があり、発生した場合でも通常はその日のうちに回復し、大きな後遺症はありません*1
また、カフェインの致死量は5〜10グラムとされていますが、これは一度にコーヒーを50杯以上摂取する必要があり、実際の生活では現実的な数字ではありません*2
ただし、カフェインは風邪薬や頭痛薬などにも含まれています。これらの薬を大量に摂取することは非常に危険ですので注意が必要です。
流産のリスクが高まる
出典:New England Journal of Medicine
2008年にサンフランシスコの女性を対象に実施された前向きコホート研究では、妊娠初期から中期にかけて、大量のカフェイン摂取が流産のリスクを高める可能性があると報告されています。*3
そのため、産婦人科医からは妊娠中にカフェインを過剰に摂取しないよう指導されることがあります。
ただし、コーヒーを1日に2〜3杯程度摂取する程度ではリスクに大きな差はないという報告も多くあるため、過剰に摂取し続けないことが重要なポイントとされています。*4
カフェイン離脱
カフェインを多量に摂取する人が摂取を中止すると、頭痛や疲労感、集中力の低下などの症状が現れることがあります。これをカフェイン離脱と呼びます。
ただし、この症状は依存性があるものの、アルコールや薬物の依存と比較して非常に軽微なものであり、カフェイン自体の依存性は低いとされています*1。
このことからも、コーヒーはアルコールや喫煙と比較してはるかに安全な嗜好品であると言えます。
【参考】離脱症状はデカフェで軽減することが報告されている
オーストラリアのシドニー大学の研究チームが、カフェインの禁断症状に対するデカフェコーヒーの有効性に関する研究結果を発表しました。この研究では、1日に3杯以上のコーヒーを飲む愛飲者61人が参加しました。*5
参加者は、24時間のカフェイン断ちの後、コーヒー、デカフェコーヒー、水のいずれが禁断症状をどれくらい軽減するかについてアンケートに回答しました。
その後、3つのグループに分けられ、2つのグループはデカフェコーヒーを飲みましたが、片方のグループにはカフェインが含まれていると嘘を伝えられました。残りの1グループは水を飲みました。
結果として、水を飲んだグループでは禁断症状に変化は見られませんでした。一方、カフェインが含まれていると思ったグループは著しく症状が軽減されたと回答し、プラセボ(偽薬)効果が現れました。
しかし、デカフェコーヒーと知って飲んだグループでも、カフェインが含まれていると思ったグループほどではありませんが、症状は軽減されました。
研究チームは、デカフェコーヒーによる軽減効果は、長年にわたるコーヒーの摂取経験による「条件付け」の結果と考察しています。
つまり、コーヒーを飲む際の感覚がカフェイン摂取と関連づけられており、感覚だけでも症状を軽減することが可能であったとみています。
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カフェインの適切な摂取量
結論から言うと、ドリップコーヒー1杯(150ml)に約90mgのカフェインが含まれているため、1日4杯程度までなら飲んでも問題ないと言えます。
欧州食品安全機関(EFSA)は健康な成人に対して、1日のカフェイン摂取量を400mg(体重1kg当たり5.7mg)以下、一度の摂取量を200mg以下にすることを推奨しています*6
妊婦や授乳中の女性については、習慣的なカフェイン摂取量が1日200mg以下であれば胎児への安全性に懸念はないとされています。
また子供については、1日に体重1kg当たり3mgをカフェインを習慣的な摂取上限とする目安が提案されています。
コーヒーのカフェイン含有量は以下のとおりです。*7
名称 | カフェイン含有量(100ml当たり) | 浸出方法 |
コーヒー | 60mg | コーヒー粉末10g/熱湯150ml |
インスタントコーヒー | 57mg | インスタントコーヒー2g/熱湯140ml |
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適量のコーヒーがもたらすメリット
コーヒーは、適量を守って摂取すると健康に良い影響があることが様々な論文で報告されています。
カフェインには悪影響だけでなく、老廃物の排出を促進する効果や自律神経の活性化を促す効果など、さまざまな効果が期待されます。
さらに、コーヒーにはカフェイン以外にも抗酸化作用のあるポリフェノールが豊富に含まれています。
ここから、コーヒー摂取によって期待できるメリットを解説します。
リラックス効果
出典:全日本コーヒー協会
大学医学部の古賀良彦教授の実験*8によると、コーヒーの種類によっては香りを嗅ぐだけでアルファ波が出ることが報告されています。
アルファ波の増加はリラックス効果をもたらし、脳の活性化にもつながりやすく、記憶力や集中力、免疫力などの向上が期待されます。
実験では、10名の女性にコーヒーの香りを嗅がせて脳波を測定しました。その結果、グァテマラとブルーマウンテンのコーヒーの香りを嗅いだ場合、アルファ波の増加が顕著でした。
一方、マンデリンやハワイコナのコーヒーでは、無臭の蒸留水と比べてもアルファ波の変化は見られませんでした。(種類による効果の違いに関しては、まだ理由が明らかになっていません)
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抗酸化作用による疾病予防効果
*12国立がん研究センターより引用
コーヒーには、カフェイン以上に豊富な「ポリフェノール」という抗酸化物質が含まれています。
抗酸化作用とは
生命活動において酸素を取り込んで利用する際に生じる「活性酸素」を取り除くか、その作用を抑える働きを指します。
過剰な活性酸素は、動脈硬化を引き起こす「過酸化脂質」の生成や、がんや老化、免疫機能の低下などに関与するとされています。
動脈硬化は、動脈が硬くなり、その結果として血管の弾力性が失われる状態を指します。これにより、血管内にコレステロールや脂肪が蓄積し、血管が狭くなり詰まりやすくなります。
動脈硬化は狭心症や心筋梗塞、脳梗塞、脳出血などの重篤な疾患を引き起こす可能性があります。
人体は本来、活性酸素の働きを抑える機能を備えていますが、年齢とともにその機能は衰える傾向があります。
そのため、抗酸化作用のある物質を摂取することは重要です。
コーヒーにはカフェイン以上の量のポリフェノール、特に「クロロゲン酸」が豊富に含まれています。
国立がん研究センターが実施した多目的コホート研究(JPHC研究)をはじめ、多くの研究がコーヒーを摂取することでがん、糖尿病、動脈硬化のリスクを下げる効果があると示しています。
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ダイエット(脂肪分解・脂肪吸収を抑制)
出典:UCC
コーヒーに含まれるポリフェノール「クロロゲン酸類」は、脂質の分解して吸収する役割を担っている消化酵素「膵リパーゼ」の働きを抑制する効果があるとUCCの学術発表で報告されています。*9
通常は、食事から取り入れた脂肪はリパーゼの働きによって「脂肪酸」と「グリセリン」に分解され「中性脂肪」となって脂肪細胞に取り込まれます。
つまり、膵リパーゼを抑制することで脂質の吸収量が減少し、メタボリックシンドロームのリスクを下げる可能性があると示唆されています。
また、スペインのグラナダ大学で実施された研究では、朝にコーヒーを飲むと新陳代謝が活発になり、運動時の脂肪燃焼を促進させる可能性があると報告されています。*10
この実験には、25歳から39歳の健康で運動能力の高い男性15人が参加し、あるチームはプラセボ(偽薬)を摂取、もう1つのチームはカフェインを摂取してエクササイズしました。
その結果、カフェインを摂取したチームはプラセボを摂取したチームより11%〜13%多くの脂肪を燃焼していたことが分かりました。
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コーヒーを飲むときに気を付けたいポイント
コーヒーは適量を守れば体によい影響を与えますが、飲み方や飲むタイミングを工夫することで、さらに健康的に飲むことができます。
以下では、コーヒーを飲む際に気をつけるべきポイントを紹介します。
寝る前の摂取は避ける
コーヒーに含まれるカフェインは、眠気覚ましの効果があります。
しかし、眠れなくなってしまう可能性があるため、寝る前の摂取は避けたほうがよいでしょう。
特にカフェインが効きやすい体質の人や、眠りが浅くなりがちな人は、夕方以降にカフェインを摂らないようにすることが重要です。
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コーヒーに砂糖やミルクを入れ過ぎない
コーヒーを飲む際に砂糖やミルクを加えることは一般的ですが、カロリーや糖質、脂質の摂取量が増えることに注意が必要です。
ブラックコーヒーのカロリーは100mlあたり4kcal程度です*11。しかし、砂糖やミルクを加えることでカロリーが増え、肥満の原因となる可能性があります。
また、砂糖の摂り過ぎは血糖値の上昇やむし歯のリスクを高めることも知られています。
毎日のコーヒー摂取においては、砂糖やミルクの量を適度に抑えることが重要です。
ブラックコーヒーが苦手な場合は、豆乳やアーモンドミルクなどの代替品を使用する、砂糖を低カロリーな甘味料に置き換えるなどの工夫をすることもできます。
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参考文献
*1旦部幸博. コーヒーの科学「おいしさ」はどこで生まれるのか. 講談社. (2016).
*4栗原久. コーヒー/カフェイン摂取と日常生活–妊婦, 胎児, 乳幼児, 小児への影響. 東京福祉大学・大学院紀要. 7:77-83. (2017).
*5Reduction in caffeine withdrawal after open-label decaffeinated coffee
*6EFSA European Food Safety Authority「 Scientific Opinion on the safety of caffeine 」
*7食品安全委員会ファクトシート「食品中のカフェイン」
*8香りが脳機能に与える効果(特別講演3)(第17回生命情報科学シンポジウム)
*9脱カフェインコーヒー生豆抽出物の脂肪分解酵素活性阻害について報告
*11文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
*12国立がん研究センター「コーヒー摂取と全死亡・主要死因死亡との関連について」