インドコーヒー豆の概要をまとめました。
地域 | 南アジア カルナタカ州・ケララ州・タミル・ナードゥ州など |
味わい・香り | チョコレート・メープルシロップ・ライム・トロピカルフルーツなど |
コーヒー生産量 | 世界第7位(369,000トン) ※2021年のデータ |
栽培品種 | アラビカ種30%:ロブスタ種70% ケント・S795(セレクション3)・SLN9(セレクション9)・Cauvery(カウベリー)など |
精製方法 | ウォッシュド、ナチュラル |
インドのコーヒー豆はマイルドな甘みと複雑なコクが特徴です。
酸味の少ない豆が多く、おもにヨーロッパなどへ輸出されていて、日本での流通量は多くありません。
飲みやすくて美味しいコーヒー豆が多いですが、過去20年間を見ると、気候変動の影響でアラビカ種の生産量の減少しており、今後も影響が懸念されています。
ブログ管理人:山口 誠一郎
コーヒーの専門家としてTV出演。文藝春秋(文春オンライン)コラム掲載。1,000種以上のコーヒー豆をレビュー。イタリア「Caffè Arena Roma」元バリスタ。
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インドコーヒー豆の特徴
インドのコーヒー豆は甘みと複雑なコクが特徴です。
日本での流通量はあまり多くなく、酸味の少ないコーヒー豆が好まれるヨーロッパなどへ輸出されています。
生産量の7割を占めるロブスタ種も、アラビカ種と同じように細かい等級がつけられ、「モンスーンコーヒー」やスペシャルティコーヒーなどが生産されています。
生産地域
インドの生産地は以下の3地域です。
1.南部 | 西ガーツ山脈にある3つの州。インド最大の生産地。 |
カルナタカ州 | 生産量はインド全体の7割を占める |
ケララ州 | 生産量はインド全体の2割 |
タミル・ナードゥ州 | 生産の半分はアラビカ種でニルギリ地区が有名 |
2.東部 | 東ガーツ山脈にある2つの州。 |
アンドラ・プラデ―シュ州 | この州で生産された豆のオークション「Gems of Araku(アラクの宝石)」が毎年ロンドンなど世界の各都市で行われる。 |
オリッサ州 | 海抜900mの冷涼な気候。10年で栽培面積は10倍以上に拡大。 |
3.北東部 | 7県でアラビカ種とロブスタ種を栽培。 |
ナガランド州・ミゾラム州など | 焼畑農業の代替となり収入を得る手段の1つとしてコーヒー栽培が始まった。ただしコーヒーより短いサイクルで販売できる果物などのほうが好まれ、コーヒー生産は伸び悩んでいる。 |
どの産地でもシェードツリーの下で栽培されることで上質な風味が生まれ、インドコーヒー豆の品質を保っています。
インドモンスーンとは
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インドモンスーンとは、重厚でまろやかなコクが特徴のコーヒーです。
かつてインドのコーヒー豆は、アフリカ大陸を回り帆船でヨーロッパに輸送されていました。
湿った季節風に吹かれたコーヒー豆は緑色から黄金色に変わり、空気中の水分で膨らみ、重厚でまろやかなコクと風味が生まれ、愛好家を魅了しました。
これがモンスーンコーヒーです。
現在は、南インドの西海岸にある処理施設で12~16週間、季節風にさらすことで当時の風味を再現しています。
使用される豆はアラビカ種・ロブスタ種のナチュラルで、主にブレンド用のコーヒー豆として使用されます。
関連記事:コーヒーの精製方法とは?ナチュラル、ハニーなど発酵で変わる味の特徴を解説
インドマイソールとは
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マイソールコーヒーとは、イギリスの統治時代にカルナタカ州で栽培され、当時の地名「マイソール」の名がつけられたコーヒーです。
甘みが前面に出ていてコクが深く、豊かな香りとまろやかな酸味のバランスが取れた味が特徴です。
現在でも、カルナタカ州で収穫された一部のコーヒー豆は「マイソール」の名で販売されています。
豆の等級(グレード)
インドコーヒー豆の等級は、上から順番に4つに等級がつけられます。
プランテーション | ウォッシュド式のアラビカ種 |
アラビカチェリー | ナチュラル式のアラビカ種 |
パーチメント | ウォッシュド式のロブスタ種 |
ロブスタチェリー | ナチュラル式のロブスタ種 |
また、モンスーンコーヒーもアラビカ種とロブスタ種に分けられ、AA→トリアージと等級がつきます。
- アラビカ・モンスーンコーヒー
- ロブスタ・モンスーンコーヒー
このほかにインド独自のスペシャルティコーヒーとして
- マイソール ナゲット エキストラボールド
- ロブスタ カピロイヤル
があります。
品種
▲インドガネーシャ/ポストコーヒー 100g 370円
インドコーヒーの主な品種は以下の通りです。
ケント | インドで発見されたティピカの変異種。トロピカルでマイルドな酸味が特徴。当時はさび病に耐性があり、1940年代までさかんに栽培されていた。 |
S795(セレクション3) | セレクション3につけられた品種名。高収量・高品質。モカを感じさせるバランスの取れた風味が特徴。2世代前にリベリカ種を親に持つセレクション1とケントとのかけ合わせ。 |
SLN9(セレクション9) | エチオピアのアラビカ種「タファリケラ」と「ハイブリッドティモール」を交配させた品種。しっかりしたコクが特徴。乾燥に強く気候に適応しやすい。 |
Cauvery(カウベリー) | インドにおけるカティモールの呼び方 |
インドのコーヒー研究所「CCRI」では、13のアラビカ種を開発していて、古い順に「セレクション(SLN)1~13」と呼ばれています。
セレクションの中には「S795」のように品種名がついたものもあります。
関連記事:アラビカ種とは?有名な16種類の品種の特徴を解説|味や香りが分かる
焙煎度合い
インドのコーヒー豆は、酸味が少なくチョコレートやメープルシロップのような甘みと複雑で深いコクが持ち味です。
この特徴を生かすには、シティロースト〜フレンチローストの深めの焙煎がおすすめです。
インドコーヒーの伝統的な飲み方
インド南部の伝統的なコーヒーは、細挽きの粉を独特のフィルターで15分以上の長い時間をかけて抽出します。
代表的な2つの飲み方を紹介します。
インディアンコーヒー
▲インディアンコーヒー
インディアンコーヒーは、濃い少量のコーヒーに砂糖と熱いミルクを加えた飲み物です。
ミルクは煮立ててから注ぐことで泡立って口当たりが滑らかになります。
マサラコーヒー
▲マサラコーヒー
マサラコーヒーは、コーヒーにシナモンやクローブなどチャイに使うスパイスを加えて抽出し、ミルクと砂糖を加えた飲み物です。
エキゾチックな風味が特徴で、クセになる美味しさがあります。
スパイスのほどよい辛さとコーヒーが合わさって、体がポカポカ温まるので寒い日におすすめの飲み方です。
インドコーヒーの歴史
▲伝説的なインドの修道士ババ・ブダン
インドに初めてコーヒーが植えられたのは17世紀のことで、聖人ババ・ブダンが巡礼の際にイエメンからティピカの種を持ち出した(密輸した)と伝えられています。
19世紀にはイギリスの植民地支配の下、大規模な農園でアラビカ種が植えられました。
しかし、さび病などの被害を経て病害虫に強いロブスタ種へ切り替えが進み、1930年代からは国内の研究所CCRIによりハイブリッド種も開発されました。
コーヒー豆の生産量推移
インドコーヒーの生産量は369,000トンで世界第7位です。※2021年のデータ
生産年度 | 生産量(t) |
2021年 | 369,000 |
2020年 | 334,020 |
2019年 | 298,020 |
2018年 | 319,500 |
2017年 | 348,780 |
2016年 | 369,660 |
上記のうち7割はロブスタ種、3割はアラビカ種です。
生産の8割が輸出され、そのうち4割は、エスプレッソ用など高品質なロブスタ種の需要があるヨーロッパ諸国向けです。
アラビカ種は主に中東へ輸出されます。
過去20年間を見ると、気候変動による大雨や雨季の日照りが原因で特にアラビカ種の生産量の減少が著しく、今後も影響が懸念されています。
市場価格の推移
生産年度 | 1kgあたりの価格 |
2021年 | 349インドルピー 4.72米ドル レート0.013530 |
2020年 | 315インドルピー 4.25米ドル レート0.013501 |
2019年 | 229インドルピー 3.25米ドル レート0.014203 |
参考:statista.com
インドコーヒーの価格は世界の市場価格に連れて上下し、過去20年間で約50%も変動しています。
インドは世界有数のコーヒー生産国ですが、伝統的に紅茶が飲まれてきた北部でも、所得の向上やカフェの流行からコーヒーの消費が急増しています。
2027年までに倍増(2020年16億米ドル→2027年40.5億米ドル)するという統計も出ており、人口の多いインドでの消費量増加は、輸出を減らし世界のコーヒー価格に影響を及ぼす可能性もあります。
インドなど76種類のコーヒー豆を比較
次の記事では、実際に飲んだインドコーヒー豆など76種類のレビューをまとめています。
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