ブラジル・ベトナム・コロンビアに続いて第4位のコーヒー生産量を誇るインドネシアのコーヒーは、フルボディのコクを含むどっしりした味わいが特徴です。
本記事では、代表的なインドネシアコーヒーの「マンデリン」や「トラジャ」などの種類ごとの特徴とおいしい飲み方を紹介します。
ブログ管理人:山口 誠一郎
コーヒーの専門家としてTV出演。文藝春秋(文春オンライン)コラム掲載。1,000種以上のコーヒー豆をレビュー。イタリア「Caffè Arena Roma」元バリスタ。
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参考文献:Crop To Cup Coffee Inporters.CONSULATE GENERAL OF THE REPUBLIC OF INDONESIA IN CHICAGO, THE UNITED STATES OF AMERICA.Exploring Five Popular Indonesian Coffee Varieties.Coffee varieties in Sumatra.mokaflor-italian-coffee
インドネシアコーヒーの基本情報
インドネシアコーヒーの基本情報を簡単にまとめました。
地域 | スマトラ島、ジャワ島、スラウェシ島、 パプア、バリ島、フローレス島、スンバワ島など |
味わい・香り | カカオ、土、ハーブ、タバコなど |
コーヒー生産量 | 世界第4位 |
コーヒーの種類 | マンデリン、トラジャ、ガヨマウンテンなど |
栽培品種 | アラビカ種10%:ロブスタ種90% |
精製方法 | スマトラ式、ウォッシュド、ハニープロセスなど |
インドネシアのコーヒーは、スマトラ島北部で栽培される「マンデリン」や、スラウェシ島で栽培される「トラジャ」などが有名です。
栽培される島ごとにコーヒーの加工方法が異なるため、香りや味わいが異なるのがポイントです。
インドネシアコーヒーの特徴
日本でよく飲まれているインドネシアコーヒーの中では、スマトラ島で生産される「マンデリン」という銘柄が有名です。
インドネシアコーヒー最大の特徴は、ハーブやスパイス、草原のような香りがあることです。
この香味は、インドネシア独自の「スマトラ式」というコーヒーの加工法が大きく関わっていて、スマトラ式加工がほかの国のコーヒーにはない独特の風味を生み出していると言われています。
インドネシア独自の加工法「スマトラ式」とは
加工(精製・精選)とは?
赤いコーヒーチェリーから「種子(コーヒー豆)」を取り出すことです。
取り出す過程で、水の中で発酵させる、もしくは天日干しで発酵させます。水を使う方法は「ウォッシュド」と呼ばれ、コーヒーがクリアな味わいになりやすい特徴があります。
天日干し発酵させる方法は「ナチュラル」と呼ばれ、発酵に伴って生まれるフレーバーが豆に強く残ると言われています。
スマトラ式は、ウォッシュドとナチュラルのいいとこ取りをした「セミウォッシュド」と呼ばれる方法です。
雑味のないクリアな味わいになり、さらに発酵によって生まれるハーブのような風味が楽しめるのが特徴です。
スマトラ式とは | |
代表的な生産国 | インドネシア |
味の特徴 | ハーブ、土のような風味 |
メリット | 乾燥が短時間で済む |
デメリット | 虫食い豆、カビ豆などの混入率が高い。 これらを取り除く手間がかかる |
上記のとおり、スマトラ式加工を行う地域は、世界中でインドネシアとアジアの一部だけです。
「野性的」とも表現されるマンデリンの風味は、この加工法によるものだと考えられています。
なお最近では、スマトラ島を含み、インドネシアの一部農園で「水洗式」「ハニープロセス(スマトラ式と同じセミウォッシュド)」などで加工されるコーヒー豆を増えています。
コーヒー豆の加工法について、詳しくはこちらをご覧ください。
関連→コーヒーの精製方法とは?ナチュラル、ハニーなど発酵で変わる味の特徴を解説
インドネシアコーヒーの種類
インドネシアコーヒーの中でも、特に有名な種類は次の5つです。
- マンデリン
- バリ・アラビカ(キンタマーニ)
- ガヨ・マウンテン
- トラジャ
- ジャコウネココーヒー(コピルアク・コピルアック)
それぞれの特徴を簡単に紹介します。
1.マンデリン
- スマトラ島北部で栽培されているコーヒー
- スマトラ式によって生まれるハーブ、スパイスのような香味が特徴
マンデリンは、最も知名度が高いインドネシアコーヒーと言えるでしょう。
深煎りに焙煎されることが多く、重厚なコクと苦味が味わえるように仕上げられているコーヒー豆が多いです。そのため、カフェオレ用のコーヒーとしても人気です。
焙煎とは、苦味と酸味のバランスが決まる加熱作業ですが、深煎りは最も酸味が少なく、苦味が味わえる焙煎度合いになります。
2.バリ・アラビカ(キンタマーニ)
- バリ島で栽培されているコーヒー
- 水洗式によるクリアな味わいが特徴
有名な銘柄だと「バリ・アラビカ神山」などが挙げられます。マンデリンのようなハーブのような香りは控えめで、重厚な甘味とコクが味わえます。
バリ・アラビカは、マンデリンのクセが強いと感じた人におすすめです。
3.ガヨマウンテン
- スマトラ島ガヨ高地で栽培されているコーヒー
- 水洗式によるクリアな味わいが特徴
ガヨマウンテンは、マンデリンと同じスマトラ島で栽培されますが、水洗式で加工されるのがマンデリンとの違いです。
マンデリンを少しクリーンにしたような風味で、クセが少なくて飲みやすいのが特徴です。
4.トラジャ
- スラウェシ島で栽培されているコーヒー
- 酸味と甘み、コクと苦味のバランスがとても良い
水洗式加工が行われるトラジャは、マンデリンのような重厚な味わいに加え、マンゴーやパイナップルのようなフルーティーさも兼ね備えています。
5つの中で最も香味の情報量が多く、フレーバーの多彩さが世界的に評価されています。
5.ジャコウネココーヒー(コピルアク・コピルアック)
コピルアク(コピルアック)は、インドネシアに生息するジャコウネコから排泄される未消化のマンデリンをきれいに洗って、焙煎したものです。
ジャコウネコの腸内でコーヒー豆が発酵することで香味が増すと言われ、世界中で珍重されています。
コピルアックは、他のコーヒーでは味わえない「年代物のウイスキーのような、熟成感のある味わい」が特徴です。熟成感をともなう甘みと、マンデリン特有のハーブのような風味が複雑に絡み合っていて、味に奥行きを感じます。
採取できる量が非常に少ないため、世界でもっとも高価なコーヒーとして知られています。
インドネシアコーヒーは5つの等級に分けられる(格付け)
インドネシアでは、コーヒー豆300gの中に含まれる欠点豆の数で格付けをします。
- G1:欠点豆0~11個
- G2:欠点豆12~25個
- G3:欠点豆26~44個
- G4:欠点豆45~80個
- G5:欠点豆81~150個
なお、「G1」の記載がないコーヒー豆でも、日本で流通するほとんどが「G1」です。
インドネシアコーヒーの特殊な栽培環境
インドネシアのコーヒー農家は、1つの農地にティピカ系やアテン系など、複数のコーヒー品種を栽培するのが一般的です。
これは、以前インドネシアのアラビカ種が全滅したことが関係しています。
インドネシアでは、19世紀にコーヒーの病気「さび病」が流行し、当時栽培していたアラビカ種(ティピカ種)が全滅しました。
当時のようにコーヒー収穫量を減少させないため、風味が優れているティピカ系の品種と一緒に、病気に強いハイブリット品種も栽培します。
そのため、インドネシア産のコーヒー豆は複数のアラビカ種をブレンドするのが一般的で、これらをまとめて「スマトラ種」と表記することが多いです。
インドネシアコーヒーの歴史
インドネシアにおけるコーヒー栽培の歴史は、オランダの植民地時代に遡ります。
オランダ東インド会社が本国に輸出するため、強制栽培制度を開始。1830年代にはジャワ島でもコーヒーが栽培され、生産を拡大していきます。
しかし、1860年~1880年に蔓延したさび病により一時衰退。そこで、アラビカ種から病害に強いロブスタ種を栽培したことで生産が回復、拡大していきます。
現在インドネシアで栽培されるコーヒーの90%がロブスタ種で、マンデリンなどのアラビカ種は10%です。
インドネシアコーヒーの美味しい飲み方
インドネシアのコーヒーは強いコクと苦味があるため、ブラックはもちろん、カフェオレとも相性が良いです。
以下の記事では、Amazonや楽天などで購入したマンデリンを飲み比べて、味わいを比較しています。