今回は、スタバの自社農園「ハシエンダアルサシア農園」について解説します。
この農園で作られたコーヒー豆は、スターバックスリザーブなどで販売されていますが、実は販売するためのコーヒーを栽培する農園ではありません。
コーヒー業界全体が直面している「2050年問題」に取り組むことを目的とした農園なのです。
ここから、具体的に同農園がどのような取り組みをしていて、 コーヒー業界にどのような貢献をしているのかを詳しく解説します。
ブログ管理人:山口 誠一郎
コーヒーの専門家としてTV出演。文藝春秋(文春オンライン)コラム掲載。1,000種以上のコーヒー豆をレビュー。イタリア「Caffè Arena Roma」元バリスタ。
タップできる目次
スタバのハシエンダアルサシア農園とは?
中米コスタリカにあるスタバの自社農園
世界中で愛されるスターバックスの魅力は、居心地の良い空間やコーヒーの提供だけではありません。
コーヒー業界を牽引する企業として、業界全体が直面する多くの課題について「社会的責任」を果たしている姿勢にも多くの共感を得ています。
スタバは2013年、中米コスタリカに自社農園「ハシエンダアルサシア農園」を入手しましたが、それもそのためのアプローチの一環でした。
コーヒーの未来を守ることを目的に作られた農園
コーヒー生産者の多くは小規模農家 (12ヘクタール未満)です 。
小規模農家では、環境変化による異常気象や病害虫の影響を受け、コーヒー栽培が難しくなっています。
近い将来、高品質なコーヒーが現在の半分ほどしか収穫できなくなってしまうとも言われています(コーヒーの2050年問題)。
ハシエンダアルサシア農園では、「アグノロミスト」と呼ばれる農学者が、コーヒーの未来を守るために日々研究を重ねています。
具体的には、病害虫に強いハイブリッド品種の開発や、収益性を高める栽培方法などを研究しています。
コーヒーの2050年問題とは?
地球温暖化による気候変動がもたらす病害虫のまん延や、コーヒー栽培に適した土地の減少などにより、2050年には現在の半分ほどしか高品質なコーヒーが収穫できなくなると言われています。
これが「コーヒーの2050年問題」と言われ、コーヒー業界全体が直面している課題なのです。
コーヒー業界は一丸となってこの問題に取り組む必要があり、そのために作られたのが「ハシエンダアルサシア農園」です。
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ハシエンダアルサシア農園の具体的な活動
どんなコーヒー品種が開発されている?
▲サビ病に抵抗力のある「ハシエンダ・アルサシア・コーヒー」
コーヒー業界の大きな課題となっている病害のひとつが「サビ病」です。
2017年にハシエンダアルサシア農園は、サビ病に抵抗力のある高品質なアラビカコーヒーのハイブリッド品種「ハシエンダ・アルサシア・コーヒー」を発表しました。
ハシエンダ・アルサシア・コーヒーは以下の品種を改良し、それらを組み合わせて生まれた新しいコーヒー品種です。
カトゥーラ | ブルボンの突然変異種。味はブルボンより若干劣るが耐病性があり収穫量も多いのが特徴 |
カトゥアイ | カトゥーラとムンドノーボを掛け合わせて生まれた交配種。軽い味わい。ほかの品種とブレンドするのが一般的 |
ヴィラサルチ(ビジャサルチ) | コスタリカで発見されたブルボン種の変異種。綺麗な酸味と甘みが特徴 |
これらの品種を改良し、それをさらに組み合わせることでバランスの取れた風味を作り出すことに成功したとスターバックスの専門家が語っています。
エチオピアやケニアコーヒーのようなフルーティーな酸味とワインのような風味、ナッツのような香りがあるとdavinsh氏がレビューしています。
ちなみに、ディカフェのハシエンダ・アルサシアはスターバックスリザーブ店舗で飲むことができます。
非常にすっきりした味わいの中にコクと、ワインのようなフルーティーさがあり、香ばしさも感じられて美味しいです。
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小規模農家が効率的なコーヒー栽培が可能となる研究とは?
小規模農家は、サビ病の発生や気候の変化に伴う「致命的なコーヒー被害」に対応する術を持たないことも問題です。
コスタリカという小規模農家の多い土地で、直面する課題を正しく理解し、解決していくための研究を重ねています。
具体的には、前述の病害虫に強い品種の開発や、小規模農家でも効率よく高品質なコーヒー栽培ができる生産技術の研究が挙げられます。
研究の成果は具体的にどんな方法で提供されている?
ハシエンダアルサシアでの研究の成果は、あらゆる情報を無償で世界中の農家に提供されています(オープンソースアグノロミー)。
実際に、2015年には研究を通じて開発した5種類の異なるコーヒー品種の木を数千本コスタリカコーヒー研究所(ICAFE)に寄贈したと述べています。
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ハシエンダアルサシア農園で栽培されたコーヒー豆
コスタリカ ハシエンダアルサシア ゲイシャ
250g ¥6,480
ゲイシャ種は素晴らしい風味を持ちますが、繊細で栽培が非常に難しい品種です。
スターバックスは長年の研究と努力により、ハシエンダアルサシアでの収穫に成功。
さらに、美味しさへの追求を重ねて発売されたコーヒーが「コスタリカ ハシエンダアルサシア ゲイシャ」です。
パッションフラワーのような香りと、熟したキウイやオレンジのような甘みが特徴で、その味わいは「明るい未来」を感じさせてくれます。
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ディカフェ コスタリカ ハシエンダアルサシア
250g ¥2,790
先ほど紹介した「コスタリカ ハシエンダアルサシア」をディカフェ(カフェイン除去)処理をしたコーヒー豆です。
柑橘系の爽やかさとチョコレートのような甘い香り、ワインのようなフルーティーさがが特徴です。
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ハシエンダアルサシア農園のバーチャルツアーも
さて、ここまで「ハシエンダアルサシア農園」の魅力を知ることで、現地に行ってみたいと思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
日本から1万キロ以上も離れたコスタリカを訪問するのは大変ですが、そこでおすすめしたいのが「ハシエンダ アルサシア バーチャルツアー」です。
現地ガイドの解説付きで、まるでその場にいるかのような体験ができます。
しかも、誰でもオンラインで参加可能なので、ハシエンダアルサシアに興味のある方は、まずはこのツアーから体験してみるのがおすすめです。
参考文献
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