ティピカの突然変異である「マラゴジッペ」は「エレファント・ビーンズ」の別名を持つ大粒の豆が特徴的で、繊細でバランスの取れた風味が高く評価されています。
今回は「マラゴジッペ」の特徴・歴史について解説し、通販で購入できるマラゴジッペ100%の焙煎豆を3つ紹介します。
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マラゴジッペの特徴
マラゴジッペとは
マラゴジッペはブラジルで発見されたティピカの突然変異種です。発見された場所の地名「マラゴジッペ」が名前の由来になりました。
コーヒー豆のサイズが他の品種に比べて約2倍と極めて大きく「エレファント・ビーン」と呼ばれています。
大きいのは豆だけでなく葉も大型で、葉と葉の間隔も大きく、樹高も高いので収穫は手間がかかります。また、さび病に弱く、収穫まで4年かかり、収量も少ないなど栽培の難しさがあります。
味は繊細な甘みと柑橘系の酸味が特徴で、特に高地の肥沃な土壌で栽培されたマラゴジッペの風味は非常に高い評価を受けています。
ブラジルのほか、メキシコ南部、ニカラグア、グァテマラなど中米の一部で栽培されていますが、上記のような生産性の低さから限られた栽培地での少量生産にとどまり、非常に希少な品種です。
共通する味と香りの特徴は「フルーティーな酸味と蜂蜜のような甘み」
マラゴジッペの風味は土壌環境により大きく左右されます。貧弱な土壌では豆の味が損なわれますが、肥沃な土壌では格段に豆の風味が増します。
その味わいはオレンジなど柑橘や洋ナシのような酸味と、蜂蜜のような甘みが特徴です。
マラゴジッペの主な産地であるニカラグアなどの国は、豆の等級が標高によって決められていますが、昼夜の寒暖差がコーヒー豆にブドウ糖の蓄積を促し、豊かな果実味を加えます。
苦みは少なく柔らかなコクがあり、口当たりも軽やかでバランスが取れた風味です。後味も爽やかで、キャラメルやチョコレートのような心地よい香ばしさが残ります。
カフェインは少なめで飲みやすく、焙煎は中浅煎り~中煎りが適しています。
ニカラグアのマラゴジッペの特徴
マラゴジッペの中でもニカラグア産の豆は甘みが特徴的です。
ニカラグアのコーヒー豆の等級は標高によって決められていますが、上質な豆ほどベリーのような甘みが際立ってきます。
柔らかくまろやかで、舌の上に乗ってくるような口当たりがあり、後味にほんのりと苦みが残ります。
酸味はやや控えめですが、柑橘系のフルーティーな香りは豊かに感じられます。
焙煎度合いは中浅煎り~中煎りがおすすめです。
中浅煎りではナッツのような香ばしさがあり、中煎りではマイルドさが増していきます。
また、ナチュラルプロセスやハニープロセスで精製された豆は、一般的なウォッシュドの豆に比べて強い果実味が感じられます。
グァテマラのマラゴジッペの特徴
グァテマラのマラゴジッペは、豊かな甘みに加えて爽やかで透明感のある酸味が特徴です。
ニカラグア産のマラゴジッペと同様に、柔らかな口当たりで飲みやすく、適度なコクもありバランスのよい味です。
口に含むと柑橘の皮を思わせる弾けるような刺激がかすかに感じられ、後からキャラメルやチョコレートのような甘さが感じられます。
香りは華やかで、レモンなど柑橘系のフルーティーさと、アーモンドのような香ばしさが感じられます。
後味はさっぱりしていて、蜂蜜のように上品な甘い余韻がいつまでも続きます。
焙煎度はニカラグアと同様、中浅煎り~中煎りで焙煎されることが多く、中浅煎りでは爽やかな酸味がより際立つのが特徴です。
マラゴジッペの基本情報
精製方法
マラゴジッペの精製においては、ウォッシュドが最も一般的で伝統的に採用されている方法です。
ウォッシュドとは、収穫後皮むきして半日から1日置いて発酵させ、空気中の微生物によりミューシレージが分解されたところで、水洗いできれいに落としてから乾燥させる精製方法です。
ウォッシュドのほかにナチュラルやハニープロセスも採用されており、特にニカラグアでは近年、ナチュラルやハニープロセスの少量ロットがCOE(カップ・オブ・エクセレンス)で多数受賞しています。
ナチュラルは、収穫した実をそのまま天日乾燥させてから、脱殻で果実からパーチメントまでを一度にはがす精製方法です。
ハニープロセスはセミウォッシュドの1種で、中南米産のコーヒーに対して使われる呼び方です。ウォッシュドとの違いは、ミューシレージを付けたまま乾燥させる点です。
ミューシレージに含まれる酵素の助けで発酵がゆっくり進み、程よい甘みとコクが加わります。
ナチュラルプロセスの豆より品質が保ちやすく、ウォッシュドのように大量の水や大きな設備も必要なく、両方のいいとこ取りをした精製方法です。
栽培環境
マラゴジッペは主に1000~1600mの場所で栽培されますが、標高の低い土地にも適応できる品種です。ですが、1500m以上の高地で栽培された豆は高品質です。
希少なマラゴジッペの産地は、肥沃な土壌に恵まれ、年間平均気温が20℃前後で昼夜の寒暖差が激しく、アラビカ種のコーヒー栽培に最適な条件がそろっています。
栽培地にはシェードツリーが植えられており、農園の人々の生活に必要な果物や野菜も同時に栽培されています。
グァテマラのマラゴジッペの産地である「コバン」は、熱帯低気圧の影響で一年中曇りがちで冷涼な気候です。
ニカラグアの産地「サンファンデルリオココ」も、熱帯雨林が広がる中に霧が立ち込める冷涼な土地です。
これらの産地では乾季の12~3月が収穫期です。多様な作物が混植された農園内で少量栽培されるマラゴジッペの収穫は手作業となります。
栽培の歴史
マラゴジッペは1870年代にブラジルのバイーア州マラゴジッペ地区の農園で発見され、その後中南米の各地に導入されました。
マラゴジッペの産地であるニカラグア、グァテマラ、メキシコではスペインによる植民地時代から圧政と搾取が行われ、1821年の独立後も内戦や独裁政治が続きました。
混乱の中でさまざまな品種が管理されずに植えられてきましたが、その中でもマラゴジッペは唯一選別して取引されていました。
コーヒーチェリーの大きさが明らかに大粒で、見分けがつきやすかったのです。
1958年にエルサルバドルの国立コーヒー研究所が、マラゴジッペをブルボンの突然変異種であるパーカスと人工的に交配させてパカマラという新品種を開発しました。
小型なので栽培効率がよく、マラゴジッペの特徴である大粒の豆と風味の良さも受け継いでおり、マラゴジッペの代替品種として推奨されました。
マラゴジッペは生産性の低さからパカマラなどへの切り替えが進み、非常に希少な品種となりました。
現在、マラゴジッペの栽培は、意欲のある一部の生産者によって支えられています。
しかし、近年スペシャルティコーヒーの認知と共に、小規模で産地と品種を特定したコーヒーの評価が高まり、マラゴジッペの価値も見直されてきています。
マラゴジッペのおすすめコーヒー豆3選
ここから、マラゴジッペのおすすめコーヒー豆3選を紹介します。
1.グアテマラ エル ディアマンテ( COE 2021#28) マラゴジッペ
価格 | 2,160円 |
内容量 | 100g |
1杯あたり(10g) | 216円 |
豆の産地 | グアテマラ ウエウエテナンゴ |
精製方法 | 水洗式(ウォッシュド) |
豆の品種 | マラゴジッペ |
焙煎度合い | 浅煎り(ライトロースト) |
2021年にグァテマラで行われたCOE(カップ・オブ・エクセレンス)で入賞を果たしたスペシャルティコーヒーです。
生産者のエルディアマンテ農園は、マラゴジッペの主な産地の1つであるウエウエテナンゴに位置します。
標高1800mの高地で栽培されており、豊かな芳香とコク、ドライフルーツのように粘りつく甘みが特徴です。
レモンなど柑橘を思わせる爽やかな風味があり、苦みは少なく、後に蜂蜜のようなすっきりとした甘みが広がります。
2.マラゴジッペ コロンビア
価格 | 850円 |
内容量 | 100g |
1杯あたり(10g) | 85円 |
豆の産地 | コロンビア |
精製方法 | 水洗式(ウォッシュド) |
豆の品種 | マラゴジッペ |
焙煎度合い | 中煎り(ハイロースト) |
徳島県徳島市にあるバッハグループの珈琲専門店「カフェ・ケストナー」の自家焙煎珈琲です。
一般的にコロンビアのコーヒーは豊かな酸味が特徴ですが、マラゴジッペの場合は酸味が抑えられてマイルドな味になります。どっしりした厚みがありますが、雑味はほとんどなく、飲みやすいコーヒーです。
3.八州高原珈琲 珈琲3種セット(グァテマラ産マラゴジッペ)
価格 | 7,000円 |
内容量 | 300g |
100gあたり | 2,333円 |
1杯あたり(10g) | 233円 |
豆の産地 | グァテマラ、タイ、ブラジル |
精製方法 | 水洗式(ウォッシュド) |
豆の品種 | マラゴジッペ、他 |
焙煎度合い | 記載なし |
グァテマラ産マラゴジッペのほかに、タイ産サイアム・ブルームーン、ブラジル産ショコラ・ピーベリーがそれぞれ100gずつ入ってセットになっています。
マイルドで透明感のあるマラゴジッペを、他の2種と飲み比べできます。
ショコラ・ピーベリーはビターチョコのような甘み、サイアム・ブルームーンは黒糖のような甘みに柑橘系の酸味が特徴です。
豆の状態で届くので、味だけでなくマラゴジッペの粒の大きさも他の品種と比べて違いが楽しめます。