今回は、バリスタの視点からスターバックスやタリーズコーヒーなどの「シアトル系コーヒー」の特徴と各社の違いを解説します。
また、イタリア系のコーヒーとシアトル系コーヒーの違いも紹介します。
タップできる目次
シアトル系コーヒーとは?
日本で大人気のスターバックスコーヒーやタリーズコーヒーは「シアトル系コーヒーチェーン」と呼ばれています。
「カフェラテ」や「カプチーノ」のような、エスプレッソにミルクを加えたドリンクがシアトル系コーヒーの代表で、高品質なアラビカ種を深煎りにしたスペシャルティコーヒーが提供されています。
シアトル系コーヒーが登場する前までのアメリカでは、浅煎りの豆を使った薄いコーヒー(アメリカンコーヒー)が主流でしたが、対照的なこの深煎りコーヒーは、スターバックスの台頭とともにアメリカ西海岸を一気に席巻します。そして、それはすぐに世界へと広がったのです。
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シアトル系コーヒーの歴史
まず、シアトル系コーヒーが誕生した背景と発展の歴史を見ていきましょう。
19世紀後半から1960年代にかけて、アメリカでは流通の発達により「インスタントコーヒー」が広く家庭に普及しました。
この波はコーヒーの「ファースト・ウェーブ」と呼ばれています。
海に面し漁業が盛んだったシアトルでは、漁師が冷えた体を温めるための熱いコーヒーが欠かせないものになっていました。
1971年にスターバックスがシアトルで創業し、初めて深煎りのコーヒーが提供されると、人々へ大きな衝撃を与えます。
品質に重きをおいたヨーロッパ風の深煎りコーヒーやイタリア式エスプレッソは、イタリアのファッションや料理が流行した当時のアメリカのトレンドとも見事に重なり、またたく間にアメリカ全土へ店舗を増やしていったのです。
1990年代に入るとシアトル系コーヒーの人気は世界中に広まり、新しいコーヒーの波「セカンド・ウェーブ」と呼ばれるほどに発展していきました。
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シアトル系コーヒーの特徴
シアトル系コーヒーは、深煎りのコーヒーやエスプレッソを提供するだけでなく、そのスタイルにも特徴があります。
大きく分けて、以下の4つが挙げられます。
テイクアウトが主流
シアトル系コーヒーの主流はテイクアウトです。基本的に持ち帰りできるカップで提供されます。
近年、日本でもテイクアウトのコーヒーショップが増えましたが、これはシアトル系コーヒーの影響だと考えられます。
また、シアトルにはAmazonやMicrosoftなど世界的な企業の本社があります。
そこで働くビジネスパーソンから、コーヒーを飲む時間や場所を選ばない「自由度の高いスタイル」が受け入れられたことも、世界中にテイクアウト文化が浸透していった理由のひとつと言えるでしょう。
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量が多くサイズも選べることが多い
シアトル系コーヒーは、持ち帰りできるカップに蓋をつけて提供されます。
コーヒーを飲む時間や場所をひとつに決める必要がないため、店内で飲んだ後に自宅やオフィスまで持ち帰れます。
あるいは移動しながらでも飲めることから、ドリンクの量は多めが好まれる傾向があります。
その日の気分やライフスタイルに合わせて、サイズを選べる自由度の高さも魅力のひとつです。
温度が高め
平均気温が低く雨の多いシアトルでは、前述のとおり熱々のコーヒーが好まれます。
そのため、シアトル系コーヒーはドリンクの温度が高めであることも特徴と言えます。
アレンジメニューが多彩
「深煎りのブラックコーヒーやエスプレッソは苦手でも、ミルクたっぷりのカフェラテなら好き」という声は数多く存在します。
それに加え、バリエーション豊かなシロップや美しいデコレーションが、年齢や性別を問わず人々を魅了したことも爆発的な人気の一因と言えるでしょう。
多彩なアレンジメニューは客層を広げ、コーヒーチェーンを訪れる人口が大幅に増えました。
シアトル系とイタリア系の違い
ヨーロッパ式の深煎りやエスプレッソをベースに独自の発展を遂げた「シアトル系コーヒー」は、しばしば「イタリア系」のカフェ(バール)と比較されます。
シアトル系とイタリア系の違いをまとめてみましょう。
シアトル系 | イタリア系 | |
量 | 多い | 少ない |
サイズ | 選べる | 選べない |
温度 | 高め | 低め |
テイクアウト | できる(持ち歩きカップに蓋をして提供) | できない(ソーサーとカップで提供) |
アレンジ | 多彩なカスタマイズ | 伝統的アレンジが主流 |
イタリア系のカフェ(バール)について
イタリア語で「エスプレッソ(espresso)」は「急行列車」を意味します。ドリップコーヒーよりも抽出時間が短いことに加え、瞬時に飲み干すコーヒーのため、このように名付けられたと言われています。
イタリアンバールでは短時間で少量を飲み干し、すぐに店を後にするのでコーヒーの温度は低めで提供されます。
16〜17世紀には、知識人の情報交換の場であったことから、今でも「社交の場」としての役割を担っています。
1日に何度も行きつけのバールを訪れて、エスプレッソをサッと嗜むという人が多いのも特徴です。
また、エスプレッソには砂糖を入れて楽しみ、ドルチェ(スイーツ)はエスプレッソとペアリングして楽しむのが一般的です。
エスプレッソをアレンジしてスイーツ化したコーヒーが広まったのは、シアトル系コーヒーがきっかけだったのです。
代表的なシアトル系コーヒーショップ
スターバックスコーヒー
スターバックスコーヒーは、1971年にシアトルで創業したシアトル系コーヒーの代表的な存在です。
世界最大のコーヒーチェーンであり、シアトル系の元祖でもあります。シアトル系コーヒーの歴史や特徴は、スターバックスとほとんど重なっていると言っても過言ではありません。
日本では1996年に銀座に1号店がオープン。当時の喫茶店には珍しい店内全面禁煙や、洗練された店内の雰囲気は、日本にカフェブームを巻き起こしました。
自由自在のカスタマイズ、豊富なアレンジコーヒーメニュー、季節限定のフラペチーノでも人気を博しており、大都市圏にとどまらず日本各地に店舗を構えています。幅広い世代から支持を受けるコーヒーチェーンです。
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タリーズコーヒー
タリーズコーヒーは、1992年にシアトルで創業し、日本で独自の発展を遂げました。
1997年に銀座に日本1号店をオープンし、日本のコーヒーチェーンのパイオニアとして病院内店舗や異業種との共同店舗を積極的に展開。
今では全都道府県に店舗を構えています。
特にスペシャルティコーヒーとエスプレッソに力を入れた、コーヒー本来へのこだわりを重視したコーヒーチェーンです。
コーヒー豆は国内焙煎し、エスプレッソはバリスタが半⼿動式マシンで一杯ずつ抽出するため、コーヒーの味に敏感な客層からの厚い支持を得ています。
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シアトルズベストコーヒー
シアトルズベストコーヒーは、シアトルの地元レストランで開催された「シアトル最高のコーヒー」というコンテストで1位を獲得しました。
それを記念し、社名を「シアトルズベストコーヒー」と改め、世界へと飛躍をはたしたコーヒーチェーンです。
フレーバーを最大限に引き出す「スムースロースト」という焙煎方法によって、奥深くスムースな飲み心地のコーヒーに仕上げるのが特徴です。
日本では、同じくシアトル発のシナモンロール専門店「シナボン」とのコラボ店舗が多く、シナモンロールとコーヒーのペアリングが楽しめることでも人気です。
ピーツ・コーヒー
ピーツ・コーヒーは、19世紀のアメリカにコーヒー革命を起こした人物、アルフレッド・ピートによって創業されたコーヒーチェーンです。
スターバックスの創業者たちは、アルフレッド・ピートから深煎りの焙煎技術を学んだという歴史があり、ヨーロッパのコーヒー文化をアメリカに広げる潮流を作り出した人物だと言われています。
2023年現在、日本には店舗がありませんが、アメリカにおけるクラフトコーヒーの元祖として知られるピーツ・コーヒーは、シアトル系コーヒーを語るうえで欠かせない存在です。
シアトル系コーヒー豆のおすすめ3選
スターバックス パイクプレイスロースト
4,760円 793g×2袋
100gあたり | 300円 |
鮮度 | ★★☆☆☆ |
豆の産地 | コロンビア、ブラジル |
焙煎度合い | 深煎り |
パイクプレイスローストは、ココアやナッツのような香ばしさを表現したブレンドコーヒーです。
スターバックス発祥の地名を冠し、ブランドを代表する商品で、中南米産の豆をあわせています。
酸味が少なく、苦味が中心の味わいなので、どなたにも飲みやすいコーヒーです。
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シアトルエスプレス フレーバーコーヒー ヘーゼルナッツ
1,080円 200g
100gあたり | 540円 |
鮮度 | ★★☆☆☆ |
豆の産地 | ブラジル他 |
焙煎度合い | 中煎り |
しっかりした苦味の中にヘーゼルナッツの甘い香りがほんのり感じられます。
有名なライオンコーヒーほど香りは強くないですが、近いフレーバーが楽しめるので、リーズナブルにヘーゼルナッツコーヒーを飲みたい人におすすめです。
酸味が少ないので、カフェオレ用のフレーバーコーヒーとしてもおすすめです。
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クラシカルコーヒーロースター シアトルフレーバーブレンド
1,090円 200g
100gあたり | 545円 |
鮮度 | ★★☆☆☆ |
豆の産地 | ブラジル コロンビア メキシコ |
焙煎度合い | 中煎り |
シアトルフレーバーブレンドは、アラビカ種のコーヒー豆だけを使用していて、冷めても風味が落ちません。
苦味が中心の味わいで、酸味は少ないので、ビターなコーヒーが好きな人に向いています。
シアトルにカフェが多いわけ
アメリカの「コーヒーの首都」とも呼ばれるシアトルは、街中にカフェが溢れていることでも有名ですが、実はバリスタとお客様のコミュニケーションの場であることも理由のひとつです。
別名「エメラルドシティ」と呼ばれるシアトルは、美しい自然と緑にあふれた街であると同時に、ダウンタウンには高層ビルが立ち並ぶビジネスの中心地。
夏の平均気温は24℃前後と過ごしやすいですが、10月ごろから始まる長い雨季があり、うつ傾向になる人も多いと言います。
コーヒーに含まれるカフェインには、うつを抑える効果があるのと同時に、カフェは家にこもりがちな人が外出を楽しむ場所にもなっているのです。
エスプレッソマシンが背を向けている理由
また、興味深いことに、それはエスプレッソマシンとバリスタの顔の「向き」にも影響を与えています。
イタリアのバールでは、手元(マシーン内側の、エスプレッソが抽出される光景)を見せるために、バリスタがお客様に背を向けていますが、逆にシアトルでは、バリスタがお客様と顔を合わせるためにエスプレッソマシンが背を向けていることが多いのです。
こうすることで、バリスタと会話をしながらドリンクの完成を待つことができ、自宅やオフィスに戻るまでの束の間、バリスタとのコミュニケーションを楽しむことができます。
そういえば、日本の喫茶店のマスターも同じように、お客様の方を向いて会話を楽しんでいます。シアトル系コーヒーが日本に深く根付いた理由のひとつには、このエスプレッソマシンの向きもあるのかもしれません。
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