簡単に「コーヒー豆」と一括りにしても、いろいろな種類があります。酸味の鮮やかなもの、コク深いもの、香りが豊かなもの。その味わいは主にコーヒー豆の産地や精製方法、焙煎方法により変わってきます。
今回は、好みのコーヒー豆を選ぶ上で欠かせない「コーヒー豆の産地ごとの特徴」を解説します。
ブログ管理人:山口 誠一郎
コーヒーの専門家としてTV出演。文藝春秋(文春オンライン)コラム掲載。1,000種以上のコーヒー豆をレビュー。イタリア「Caffè Arena Roma」元バリスタ。
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コーヒーの品種は大きく分けて2種類
産地ごとの特徴の前に、まずコーヒー豆の品種について簡単に解説します。
市場に出回っているコーヒーの品種は大きく分けて2種類です。
ここから原産国のそれぞれの気候や品質向上のためにコーヒーが品種改良がされ、現在は3500種類以上あると言われています。
アラビカ種とロブスタ種、そして滅多に市場に出回らない「リベリカ種」を加えて、コーヒーの「3大原種」と呼ばれています。
アラビカ種はもっとも高品質なコーヒー
アラビカ種はエチオピア原産の品種です。コーヒー生産の約60〜70%を占めています。
病気や害虫に弱く、また霜や乾燥、高御多湿にも弱いため、標高900m以上の高地で栽培されています。
繊細な扱いが必要な一方、手間をかけた分だけ高品質なコーヒー豆が収穫できる品種です。
耐病性や生産性向上のための品種改良が積極的に行われていて、3500種類以上の種類があります。
スペシャルティコーヒーを取り扱うショップで販売されている豆は、そのほとんどがアラビカ種です。
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カネフォラ種(ロブスタ種)
カネフォラ種(ロブスタ種)は、アフリカ原産の品種です。病気や害虫、高温多湿に強く、標高が低い地域での栽培が可能です。
また成長も早く、栽培に手間がかかりません。結実が速やかで収穫量も多いためアラビカ種よりも安価です。
よく耳にするロブスタ種はカネフォラ種の一種です。
苦味と渋みが強く、酸味が少ないのが特徴です。主に缶コーヒーやインスタントコーヒーに用いられ、味わいに深いコクを与えることから、ブレンド用のコーヒー豆としても用いられています。
カフェインの含有量は2〜3%で、アラビカ種の約2倍あります。
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リベリカ種は世界でわずか1%しか流通量しない
リベリカ種は東アフリカのリベリア原産です。カネフォラ種と同様に耐病性があり、害虫にも強く、高温多湿の低地でも栽培できる品種です。
しかし、果実が成熟するのに時間がかかり、アラビカ種、カネフォラ種に比べて風味も劣るため、その収穫量も少ないです。
10m以上の大木になるので収穫が大変なことも栽培量の少なさに関係します。
コーヒー豆の大きさにバラつきがあり焙煎がしにくい品種でもあります。主に原産国の自家消費や研究用として栽培されています。
流通量は世界で約1%ほどです。
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コーヒー豆の種類一覧(産地ごとの味の特徴まとめ)
コーヒー豆にはブラジル、コロンビア、インドネシア、エチオピア、グァテマラなど様々な産地があり、産地によって異なる味わいが楽しめます。
生産地域ごとの特徴を簡単にまとめると、次の通りです。
中南米(グァテマラ、ブラジル、コロンビア、コスタリカなど)
苦味と酸味のバランスが良い。飲みやすいコーヒーを探している方におすすめ。
アフリカ(エチオピア、イエメン、ケニア、タンザニアなど)
軽い口当たりで華やかな酸味と香りが特徴。フルーティーなコーヒーが好きな方におすすめ。
アジア、オセアニア(インドネシア、パプアニューギニアなど)
インドネシアは「マンデリン」「トラジャ」が有名。重たいボディと深いコクが特徴。苦味が強いコーヒーが好きな方におすすめ。
パプアニューギニアはクリアな味わいと豊潤な甘みが特徴。すっきりした味のコーヒーが好きな人におすすめ。
どのコーヒーの種類を選べば良いか迷っているなら、まずは中煎り〜深煎りのグアテマラやブラジルを飲んで、そこから好みを探っていくのがおすすめです。
酸味の少ないコーヒーが好きなら深煎りのマンデリン、深煎りのブラジルがおすすめ。
爽やかなコーヒーが好きなら浅煎りのアフリカ産コーヒーがおすすめです。
76種類のコーヒー豆を
飲み比べてみた
人気のコーヒー豆を飲み比べ、どれが一番おいしいかをランキング一覧表にまとめました。
送料無料、初回500円など、お得に買えるコーヒー豆も紹介しています。
ここから産地ごとの特徴を詳しく解説します。
グアテマラ
原産国は中央アメリカ北部に位置するグアテマラ共和国は、国土の70%を火山に囲まれた山岳地帯です。
火山性土壌に恵まれ、雨量が豊富で寒暖差が大きく、このような気候環境ではコーヒー豆の風味が豊かに仕上がります。
ウォッシュドと呼ばれる精製方法が主流で、フルーティーな酸味と深いコク、ナッツやチョコレートのような甘さと華やかな香りが特徴。
ブラックだけでなくミルクとの相性も良いので、幅広い飲み方ができる点もポイント。
グアテマラは総じて品質が高く美味しいコーヒー豆が多いので、まず最初におすすめしたい銘柄です。
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ブラジル
ブラジル産コーヒーは世界第1位の生産量を誇ります。世界に流通するコーヒー豆のおよそ30%はプラジル産です。
「ナチュラル」と呼ばれる精製方法が主流で、クセがなく飲みやすい特徴をもっています。
ブラジル産コーヒー豆の多くは程よい苦味と爽やかな酸味、深いコクがあり、非常にバランスのとれた味わいが感じられます。
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ブルーマウンテン
原産国はジャマイカのブルーマウンテン山脈です。標高800m〜1200mの限られたエリアで収穫されたものを指します。
この地域は急斜面で弱酸性の土壌、1日の寒暖差8℃以上などコーヒーを栽培する最高の条件が揃っています。
そして、名前の由来にもなっている「青みがかって見える霧」が頻繁に発生することによって土に十分な水分が含まれます。
これにより、ブルーマウンテンの素晴らしい味わいが生まれます。
その味わいは酸味とコクのバランスと香りが非常に良く、飲みやすい口当たりで「コーヒーの王様」と呼ばれています。
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コスタリカ
コスタリカはアラビカ種のみ栽培が許可されています。コーヒ栽培に適した地形と土壌で、コーヒー栽培のほとんどは高地で行われています。
主にコスタリカで発展している精製方法(ハニープロセス)によってバリエーション豊かな味わいが楽しめます。
苦味が控えめで熟れたベリーのような甘さと、爽やかな酸味が特徴です。ミルクとの相性も良く、キャラメルのような風味を感じられます。
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コロンビア
コロンビアは緑豊かな丘陵地帯です。雨季と乾季、昼夜の寒暖差、火山性の土壌とコーヒー豆の栽培に適した環境です。
ナッツのような風味と豊かな甘み、やわらかなコク、まろやかな酸味でバランスが良いコーヒーです。ブレンドコーヒーのベースにも用いられています。
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キリマンジャロ
タンザニアのキリマンジャロ山岳地帯で栽培されています。他の産地のコーヒー豆よりも高い標高1500m〜2500mで栽培されています。
生豆の状態でも感じられる上質で強い酸味と、しっかりしたコクが特徴の野生味溢れる味わいです。
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モカ(エチオピア、エチオピア・モカ)
生産国はイエメンとエチオピアです。エチオピアはアラビカ種発祥の地です。
イエメンのモカ港から輸出されたものが始まりです。対岸のエチオピア産のコーヒー豆も一緒に輸出されていたため、同じくモカと呼ばれています。
モカは産地によってブランド化されており、名前が異なります。収穫された産地がそのままコーヒー豆の名前になっています。
イエメン産はモカ・マタリ。
エチオピア産はモカ・ハラー(エチオピア・ハラー)、モカ・シダモ(エチオピア・シダモ)、モカ・アビシニアン(エチオピア・アビシニアン)、モカ・イルガチェフェ(エチオピア・イルガチェフェ)などが有名です。
モカ独特のフルーティーで爽やかな酸味と、甘みとコクが楽しめるコーヒーです。
とくにモカ・シダモ(エチオピア・シダモ)はそのすばらしく芳醇な香りから「コーヒーの女王」と呼ばれています。
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ゲイシャ
ゲイシャコーヒーの原産地は先ほど紹介したエチオピア。栽培の難しさから、ゲイシャは長い間忘れられていました。
しかし、2004年にパナマで開催されたコーヒーの国際品評会「ベスト・オブ・パナマ」でエスメラルダ農園が出品したゲイシャが過去に見ない高額で落札され優勝。
この出来事は「ゲイシャショック」と呼ばれ、これをきっかけにゲイシャはまたたく間に世界に名を轟かせます。
実際に飲むと、圧倒的な華やかさと繊細な甘みが感じられます。
熟したパイナップルやパッションフルーツのような濃厚な甘味と、フルーティーで華やかな酸味が口に広がります。
そして、香水にたとえられるほど強く香る柑橘のようなアロマが印象的です。
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ケニア
原産国のケニアは標高が高いため、昼夜の温暖差大きくあります。そのため、コーヒーの実が引き締まり、美味しさが凝縮されます。
コーヒー栽培に適した環境だけでなく管理体制も確立している国です。
ケニア産コーヒーの味わいは、グレープフルーツやベリーを思わせる明るい酸味とやわらかなコク、上品で華やかな香りとその風味はとても豊かです。
また、焙煎度によって味わいが劇的に変わるのも特徴です。
中煎りから深煎りすると酸味が抑えられ、アフリカ産コーヒーらしいスパイシーさが引き立ちます。
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ハワイコナ
ハワイ島の西側のコナ地区で栽培されています。
標高は決して高くないですが昼夜の寒暖差、火山性の肥沃な大地に恵まれ、高品質なコーヒー豆を栽培しています。
味わいは柑橘系のような、はっきりとした強い酸味と熟れたフルーツのような甘い香りが特徴。
コクはしっかりしていながらも、苦味は強くないので飲みやすいコーヒーです。
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マンデリン
原産国はインドネシアのスマトラ島です。インドネシア産のコーヒー豆の90%はカネフォラ種(ロブスタ種)ですが、マンデリンはアラビカ種です。
穏やかな酸味、どっしりとした深みのあるコク、スパイシーなハーブや森の湿った土のような、大地を思わせる力強い風味が特徴です。
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コピ・ルアク
インドネシアのジャコウネコが完熟したコーヒーチェリーだけを食べ、その排泄物からとれるコーヒー豆です。
1匹のジャコウネコから1日わずか3gしか取れないので、希少価値がとても高く、世界一高価なコーヒー豆です。
チョコレートのような甘い香りが感じられ、後味がさっぱりしています。
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パプアニューギニア
パプアニューギニアでは、1930年代にヨーロッパ人の宣教師がジャマイカのブルーマウンテンの苗木を持ち込んだことがきっかけで、コーヒー栽培がスタートしました。
おもに標高1,500m~2,000mの高地でコーヒーを栽培。完熟したコーヒーの実だけを手摘みで収穫し、通常より長い期間をかけて発酵させて天日乾燥させます。
さらに、これらを行った完成豆だけを選別するという手間をかけているため、非常に完成度の高いコーヒー豆が生まれます。
苦味と酸味のバランスが良く、ブルーマウンテンのような透明感のあるおいしさが特徴。豊潤な甘みと優しい味わいが特徴です。
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まとめ|コーヒー豆は生産地によって味が大きく変わる
コーヒー豆が生産された地域によってコーヒーの味わいはかなり違います。
中南米は苦味と酸味のバランスが良く、アフリカは鮮やかな酸味、アジア・太平洋(主にインドネシア)は重めの深いコクを感じられるコーヒーが多いです。
しかし、一概に産地だけで味わいが決まるわけではないのがコーヒーの面白いところ。
精製方法や焙煎具合、豆の挽き具合などにより、味わいや香りはさらに変化します。
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