コーヒーの品種「カネフォラ種(ロブスタ種)」は、ほとんどがインスタントコーヒーなど加工用や、増量目的のブレンド用コーヒー豆として使われています。
しかし、一部の高品質の豆は独特の苦みとクリーミーさを活かしてエスプレッソにブレンドされます。
本記事ではロブスタ種とアラビカ種の違い、豆の見分け方も写真付きで解説します。
ブログ管理人:山口 誠一郎
コーヒーの専門家としてTV出演。文藝春秋(文春オンライン)コラム掲載。1,000種以上のコーヒー豆をレビュー。イタリア「Caffè Arena Roma」元バリスタ。
ロブスタ種とは?アラビカ種との違い
「ロブスタ」という名前は、「強い」という意味の「Robust」が語源になっており、病気に強く、栽培しやすい、さらに収量も多いという特徴があります。
また、アラビカ種と比較して強い苦味があり、アラビカ種の2倍のカフェインが含まれることも特徴です。
低コストで栽培できるため、インスタントコーヒーや缶コーヒー、栄養ドリンクのカフェインなど加工に用いられるほか、業務用のレギュラーコーヒーに使われています。
ロブスタ種はまずい?実際に飲んでみた正直な感想
実際にインドネシアのロブスタ種100%のコーヒー豆を飲んでみました。
独特のパンチのある苦みと強いコクが感じられます。まずいとは感じませんが、アラビカ種のような洗練された風味はなく、ワイルドさを感じます。
ナッツのような香りと、チョコレートのようなフレーバーを感じるため、ミルクや砂糖との相性が非常にいいです。どっしりした味なのでアイスコーヒーにも向いています。
同じ産地のマンデリンと比較すると甘みが少ないので、味全体がやや尖っている印象を受けますが、ストレートで提供されるグレードのロブスタ種は意外とおいしいです。
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ロブスタ種がまずいと言われる2つの理由
そもそも「味の美味しさ」を追求していない
ロブスタ種がまずいと言われる理由は、まず栽培目的の違いが挙げられます。
生産者にとって、ロブスタ種を植えるメリットは収量が多く栽培が楽なことであり、味の追求ではありません。
インスタントコーヒーや、レギュラーコーヒーを増量させる目的で使うなら、このような低価格、低品質のコーヒー豆で十分なのです。
ですが、イタリアの伝統的なエスプレッソにはロブスタ種を必ず15%から、場合によっては50%ほどブレンドします。
ブレンドすることでロブスタ種特有のコクとチョコレート、ワインのようなフレーバーが感じられ、クレマも綺麗に生成され、クリーミーな口当たりになります。
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日本に高品質なロブスタ種が出回りにくい
もう一つ、ロブスタ種がまずいと言われる理由があります。それは、日本に高品質なロブスタ種が出回りにくいこと。
品質の高いロブスタ種は、イタリアや北米などの高級エスプレッソに使われます。本当に美味しいロブスタ種は買い占められることも多いです。
そのため、アジア向けには高品質の美味しいロブスタ種が出回らず、日本でロブスタ種の評価が低くなる一因となっています。
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ロブスタ種とアラビカ種を見分ける方法
市販のコーヒー豆にはロブスタ種が使われるのが一般的ですが、実際どれくらい入っているか見分けたい人もいると思います。
一般的に、 アラビカ種は縦長でロブスタ種は丸っこい見た目と言われますが本当でしょうか?
生豆を比較してみました。
ロブスタ種は確かに丸っこい豆もありますが、アラビカ種と区別がつきにくい縦長の豆もあります。
生豆の状態では正直はっきりとした違いは分かりにくいです。
焙煎すると以下のようになります。
焙煎すると、豆の形状だけでは見分けがつきにくいです。
ですが、色が違う豆が混じっているのがわかるでしょうか?
日本で流通するロブスタ種は、小さな穴が空いた「虫食い豆」、色がちょっと薄い「死豆」「未成熟豆」などが混じっています。
細かい理由は割愛しますが、これらの豆はロブスタ種の可能性が極めて高いです。
ちょっと面倒ですが、事前に取り除くとコーヒーが本気で美味しくなります。
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ロブスタ種はアラビカ種のように「銘柄」が存在しない
▲アラビカ種には「モカ」などの銘柄があるが、ロブスタ種には基本的に銘柄がない
コーヒーの銘柄は、日本では全日本コーヒー公正取引協議会によって定められています。
アラビカ種にはブルーマウンテン、キリマンジャロなど登録された銘柄がありますが、ロブスタ種にはありません。
これはロブスタ種が主に加工用、業務用などを重視した豆として使われているのに対し、アラビカ種は産地、農園、加工業者が品質を追求しているためです。
また、アラビカ種はさまざまな品種にわかれていることも、多くの銘柄が存在する理由です。(ロブスタ種には2つの品種「ウガンダ、コニロン」しかない)
ただ、世界的に見れば、ロブスタ種にも以下のような銘柄(ブランド)が存在します。
- ベトナムのDalat Peaberry Robusta(ダラットピーベリーロブスタ)
- ロブスタ100%のエスプレッソ用コーヒー豆「Borbone(ボルボーネ)」など
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ロブスタ種はアラビカ種よりカフェインとクロロゲン酸が多い
苦味の素となる「クロロゲン酸」はコーヒー豆から初めて見つかった物質です。
多くの機能性を持つポリフェノール物質群の1つで、脂肪の吸収抑制、発がん予防、糖尿病予防などが報告されています。
ロブスタ種に含まれているクロロゲン酸は7~11%で、アラビカ種の5~8%に比べやや多いです。(焙煎によって多少減ります。)
また、ロブスタ種のカフェイン含有率もアラビカ種の2倍以上です。(焙煎によってカフェインが減ると言われていますが、実際にカフェイン量はほとんど変化しません。)
クロロゲン酸 | カフェイン含有率 | |
アラビカ種 | 5~8% | 0.8~1.4% |
ロブスタ種 | 7~11% | 1.7~4% |
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ロブスタ種のおもな生産国
ロブスタ種の生産量世界1位はベトナムです。
第2位はブラジル、インドネシア、ウガンダ、インドと続きます。メキシコはアラビカ種で有名な中米諸国の中で、唯一ロブスタ種の栽培がさかんな国です。
アメリカ合衆国農務省が発表した2022年の統計によると、ロブスタ種は23の国で生産されており、主な生産量は次のようになっています。
- 1位ベトナム(1800t)
- 2位ブラジル(1278t)
- 3位インドネシア(558t)
- 4位ウガンダ (300t)
- 5位インド (255t)
6位~10位はマレーシア(120t)、コートジボアール(88t)、タンザニア及びタイ(約40t)と続き、11位~15位はラオス、メキシコ、カメルーン 、フィリピン、マダガスカルです。
その他にコンゴ共和国 、エクアドル、ギアナ、グァテマラ、トーゴ、ニカラグア、シエラレオネ、パプアニューギニア、アンゴラの各国で10t以下生産されています。
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ロブスタ種とアラビカ種をかけあわせたコーヒーもある
ロブスタ種とアラビカ種をかけあわせて、生産性の高さと美味しさの両立を狙ったコーヒーもあります。
代表的な品種は以下の4つです。
- ハイブリッドティモール
- アラブスタ
- カティモール
- バリエダコロンビア
ハイブリッドティモール種
ハイブリッドティモール種は、1920年にインドネシアの東ティモールでロブスタ種とアラビカ種の自然交配によって生まれた品種です。
アラビカ種とロブスタ種の自然交配はありえないと考えられてきましたが、突然変異したロブスタ種がアラビカ種との自然交配をしたという非常に稀なケースで、コーヒーの天敵「さび病」への耐性から世界中で注目を集めました。
ハイブリッドティモールの誕生は、その後のハイブリッド種開発の契機となりました。
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アラブスタ種
アラブスタとは、人工的に交配させたアラビカ種とロブスタ種のハイブリッド品種の総称です。
ハイブリッドティモールのさび病耐性に注目した世界各地の研究機関により開発されました。
インドネシアでは、1950年代からティモール島で、1978年にはスマトラ島でも栽培が始まりました。
そこで、突然変異などによって生まれた様々なハイブリッド種がカティモール、サルキモール、バリエダコロンビアなどさらなる新種の開発に利用されました。
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カティモール種(カチモール種)
カティモール種(カチモール種)は、1959年にハイブリッドティモールとカトゥーラを交配させて作られた品種です。
高収量で、さび病などコーヒーチェリーの病気全般に耐病性のある品種です。
1970年にはブラジルやアフリカに導入されましたが、本格的に栽培が普及したのは1980年代、大量に流通が始まったのは1995年のことです。
バリエダコロンビア種
バリエダコロンビアは、コロンビアのFNCという研究機関が1968から1982年にかけて、ハイブリッドティモールとカトゥーラを交配して開発したハイブリッド品種です。
1983年にコロンビアでさび病がまん延した際も耐性を示し、国のコーヒー産業を救いました。
木が小型で密植できるため生産性が高いため、コロンビア国内ではアラビカ種からバリエダコロンビア種への切り替えが進み、広く普及しました。
しかし、フレーバーや甘み、ボディに欠けるため、さらに改良が重ねられ、より風味がよく耐病性の高い「カスティージョ」が生まれる基盤となりました。
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ロブスタ種の基本情報
ロブスタ種の栽培環境
▲ブラジルなど広大な平地で栽培されるロブスタ種は機械で収穫される。
ロブスタ種は、原生地である中央~西アフリカの環境を好みます。
年間気温22~26℃、年間降水量1200~2500mm、多湿な熱帯雨林気候で栽培できますが、乾季が長く続く場所は向いていません。
標高250~1500mの低地で栽培でき、酸性の土壌や痩せた土壌でも育ちます。
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ロブスタ種の栽培の歴史
ロブスタ種という名前が付けられたのは、アラビカ種より100年以上も後の19世紀末のことです。
1898年にコンゴ、その後ウガンダで発見された後、20世紀初めには世界中の低地に普及しました。
ロブスタ種はアフリカにとどまらず、ブラジル北部やインドネシア、インド、フィリピン、ベトナムといったアジア地域にも広がりましたが、それは病気や害虫の甚大な被害との戦いの歴史とも言えます。
例えばウガンダでは、コーヒー青枯病(立ち枯れ病)などの病気に対抗し、国のインフラ並みに重要であるコーヒー産業を守る必要からロブスタ種を選んで栽培してきました。
また、インドでは40年間に約33万の生産者がアラビカ種からロブスタ種に切り替えていきましたが、理由は「white stem borer」というアラビカ種の茎に穴を開ける害虫の発生でした。
ロブスタ種の生産量は2000年代も増加を続けていて、2020年の世界の生産量は4400トンで、15年間前の約1.5倍となっています。
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ロブスタ種のおすすめコーヒー豆3選
1.ロブスタ ハニー 200g Future Farm シングルオリジン
1,300円 200g
この農園では、ロブスタ種の品質を極限まで高めるべく、栽培から精製方法まで常に新たなチャレンジを行っています。
コーヒー品質協会(CQI)の評価でスコア85.00を獲得済みで、ワインのようなフレーバーが味わえます。
産地 | ベトナム ラムドン省 Future Coffee Farm |
精製方法 | 水洗式(ウォッシュド) |
焙煎度合い | 中深煎り(シティロースト) |
2.ウガンダ カウェリ農園 ナチュラル ロブスタ
1,416円 300g
カウェリ農園はウガンダで唯一の大規模コーヒー農園で、高品質なロブスタを作る農園の1つです。
実際に飲むと、ビターチョコレートのような風味と力強いコクが感じられます。
注文を受けてから焙煎してくれるので、飲みごろの新鮮な状態で届きます。
産地 | ウガンダ ムベンデ地区 カウェリ農園 |
精製方法 | ナチュラル式 |
焙煎度合い | 浅煎り~深煎りまで |
3.インド ロブスタ シングルオリジン
637円
日本ではあまり流通していないインドの最高品質ロブスタ種です。
実際に飲むとビターチョコレートのような味と、なめらかでクリーミーな口当たりを感じます。
ブラックはもちろん、アイスコーヒーと相性が良いです。
豆の産地 | インド |
精製方法 | 水洗式(ウォッシュド) |
焙煎度合い | 深煎り(フルシティ) |