サードウェーブコーヒーとは、3番目のコーヒーの流行という意味で、2000年代から始まったコーヒー業界の局面です。
ダイレクトトレードされたシングルオリジンコーヒーを使い、その豆のフレーバーがはっきり出る「浅煎り」にして飲むのが特徴です。
本記事では、サードウェーブに至るまでの経緯やサードウェーブコーヒーの特徴、自宅での淹れ方を紹介します。
タップできる目次
サードウェーブコーヒーとは?
サードウェーブコーヒーとは、ファーストウェーブ、セカンドウェーブに続くコーヒーの潮流と、そこで提供されるコーヒーのことを指します。
発祥は1970年代のノルウェーのオスロで、独自のコーヒー哲学を持ったカフェや愛好家たちによってその波が広がり、米国では2000年代から、日本では2015年ごろに到達しました。
ファーストウェーブからセカンドウェーブまで
ファーストウェーブは1960年代までのコーヒーの流行で、インスタントコーヒーの発明と大手企業の大量生産が始まった時代です。
1901年 「パンアメリカン博覧会」でインスタントコーヒーが発表され、1938年にはネスカフェなどのブランドが登場します。
日本では東京オリンピックの前に森永製菓がコーヒー生産を開始しました。
高級品だったコーヒーが庶民でも気軽に楽しめるようになったのがファーストウェーブですが、味や豆の品質は二の次でした。
セカンドウェーブは米国の「ピーツコーヒー」というコーヒー店が始まりです。産地を厳選した豆を自家焙煎し、淹れ方にも気を遣う店として有名になりました。
▲ピーツコーヒー&ティー
ピーツコーヒーの影響を受けた3人の若者が立ち上げたのがスターバックスです。
深い焙煎の豆を使ったシアトル系のコーヒーはセカンドウェーブの特徴です。
エスプレッソ系のカフェラテ・カプチーノを初め、家では作るのが難しいフラペチーノなど多様なドリンクが新たな価値となりました。
内装に凝ったカフェで家でも職場でもない「第3の空間(サードプレイス)」を楽しむ文化や、テイクアウトしたカップを片手に街を歩くスタイルもセカンドウェーブの特徴です。
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サードウェーブコーヒーの特徴
サードウェーブは高品質な豆にこだわったコーヒーの提供が特徴で、次の4つの特徴があります。
- シングルオリジン
- 浅煎り
- ハンドドリップ
- ダイレクトトレード
シングルオリジンを飲んで豆の個性を楽しむ
サードウェーブコーヒーはコーヒーを飲むという体験を通して豆自体と向き合うトレンドです。
農園や産地の個性を重要視するため、ブレンドではなく1つの農園や、1つの品種だけを使った「シングルオリジンコーヒー」で提供されます。
セカンドウェーブの時代は、コーヒー豆の表示も生産国と等級程度でしたが、サードウェーブのシングルオリジンコーヒーでは、農園名・生産地域・品種のみならず、収穫月までも記載するようになりました。
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フルーティーな浅煎りコーヒーを味わう
サードウェーブの特徴は、産地ごとのフレーバーがはっきり出る浅煎りコーヒーの酸味です。セカンドウェーブの深煎りコーヒーとは対照的です。
コーヒーチェリーは果物です。その種子であるコーヒー豆にも、実はフルーティーな香りと酸味が備わっています。
ちなみに、「浅煎りコーヒーは酸っぱい」と言われることもありますが、ポストコーヒーなどスペシャルティコーヒー専門店の浅煎りは豆の糖度が高い(酸味以上に甘みがある)ため、実際酸味はかなりマイルドです。
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ハンドドリップ
▲ドトール系列の神乃珈琲。シングルオリジン豆を使ったハンドドリップコーヒーを提供する
ハンドドリップはマシンで淹れるコーヒーに比べて時間のかかる抽出方法ですが、サードウェーブではその手間をかけることに改めて価値を見出したといえます。
仕上がりの味をコントロールできるので、豆の個性に合わせた淹れ方ができます。
ダイレクトトレード
コーヒーの価値を追求するという点で、サードウェーブのコーヒー哲学に重なるのが「スペシャルティコーヒー」です。
スペシャルティコーヒーは品質や味だけではなく、生産者が持続的にコーヒーを生産できるよう生産地の環境も含めた評価をしています。
仕入れは、品質に見合った適正な価格をつけるフェアトレードと、生産者と焙煎業者の間で顔の見えるダイレクトトレードが行われています。
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サードウェーブコーヒーを家で楽しむ
コーヒーの抽出は簡単です。極論、「上からお湯をぶっかけるだけ」くらいの感覚でOKです。
浅煎りは深煎りよりも太めにお湯を注いで、サッと抽出することで渋みがなくなり、甘みが引き立ちます。
甘みが引き立つことで、酸味がマイルドに感じられて、結果的に美味しい浅煎りコーヒーになります。
準備するもの
特別な道具はコーヒー豆くらいでしょうか。あとは普段ハンドドリップでコーヒーを淹れるときと同じです。
コーヒー豆はシングルオリジンコーヒーを選びます。
▲農園や品種、栽培エリアの標高などが明記されているものを使う
コーヒー豆は通販などで買えます。できれば、注文後の焙煎を行っている専門業者で購入して、淹れる直前に自分で挽くのがおすすめです。
粉の場合は鮮度が落ちやすいので、1週間で飲みきれる量を購入しましょう。
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淹れ方
淹れ方の手順を以下にまとめました。
やること | やる理由 |
沸騰させたお湯を常温のドリップ用ケトルに移し替える | 湯温を90℃前後まで一気に下げる。沸騰直後のお湯を使うと刺さるような苦味が出る |
ケトル内のお湯は満水にする | お湯の温度が下がりにくくなる。ケトル内のお湯が少ないと冷めやすい |
サーバーとカップを湯通しして温めておく | 冷めたままドリップするとコーヒーがぬるくなる。コーヒーは熱い方が香りが立ちやすい |
コーヒー豆を中細挽きにする | 中挽きだと若干あっさり目になる。浅煎りは中細挽きの方が甘みが出やすい |
粉全体が湿る程度のお湯を注ぎ、30秒蒸らす | 蒸らさないと抽出不足になって甘みが弱くなる |
抽出量に達するまでドリップする | カップ1杯分150ccなら1分(抽出1分+蒸らし30秒=計1分30秒) |
抽出時間は最長で1分30秒。これより長くなると渋みが出ます。(150cc抽出の場合)
1分〜1分30秒の間に抽出を終える、くらいの感覚でOKです。
家庭で楽しむコーヒーなので、厳密に時間通りに抽出を終える必要はありません。
豆の品質が良いので、抽出を適当にやっても美味しくなります。
コツ
浅煎りのコーヒー豆は深煎りよりも水分が多いため重く、粉がドリッパーの下部に沈み込みやすいです。
沈み込むと湯だまりができやすくなり、「過抽出」という状態になって渋みが出ます。
▲浅煎りはこのように湯だまりができるのが普通
渋みが出るとしつこさを感じ、甘さも感じにくくなるので、お湯を太めに注ぎ、まず酸味と甘みを抽出します。
(コーヒーの酸味と甘みは抽出の前半で、苦みとコク、渋みは後半で出てきます。)
後半の時間を長く取ればコクと苦味が増し、短くすればフルーティーさが強くなります。
▲お湯の太さはこれくらいでOK。
- 浅煎りは一気にドバドバとお湯を注いでOK
- 攪拌した方が良いとも言われていますが、やっても味はほとんど変わりません(上からお湯を注ぐだけで十分抽出できる)
- 粉は細挽きが良いとも言われますが、渋みが出やすくなるので中細挽きがベター
湯だまりができて時間内に抽出できない場合、そのまま放置してても渋みが出るだけなのでドリッパーをはずします。
足りない分は加水して補います。
抽出前半で甘みと酸味を落としているので、ただのお湯を加えても十分美味しくなります。
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サードウェーブコーヒーを飲めるお店
ブルーボトルコーヒー
華やかなフレーバーが特徴の「ブルーボトルコーヒー」は、2002年にサンフランシスコで誕生しました。
元クラリネット奏者の創業者は、ファーマーズマーケットに出店し、日本の喫茶店のように一杯ずつコーヒーを淹れました。
当時のアメリカでは珍しい淹れ方で最初は不思議がられましたが、次第に支持されるようになり、サードウェーブの先駆けとなりました。
2005年には店舗をオープンし、注文後に丁寧に入れる抽出方法と豆の鮮度の良さ、味へのこだわりが評判となりました。
2015年には長年の夢であった日本での1号店オープンを果たし、現在はアメリカ、日本、韓国、香港で約100店舗を展開しています。
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FUGLEN TOKYO(フグレン)
柑橘系フルーツの味が特徴の「FUGLEN」は北欧ノルウェーのコーヒーショップです。
2012年に海外1号店として東京に出店し、その2年後には、マイクロロースターとして渋谷で焙煎を始めました。
豆の鮮度を保つため専用の低温倉庫で保管し、シングルオリジンのコーヒー豆のみを提供しています。
季節毎に新鮮なコーヒー豆を世界の農園から、透明性の高いルートで仕入れ、毎年生産者を訪ねて栽培環境、生産工程を確認しています。
猿田彦珈琲
日本におけるサードウェーブコーヒーの先駆け「猿田彦珈琲」はJava(ヤヴァ)というノルウェーの人気カフェをモデルにしたショップです。
品評会の優勝豆を使ったカフェラテを紙コップで提供するJavaの存在に感銘を受けた元俳優のオーナーが、「同じようなお店をやりたい」という一心でスタートしたお店です。
猿田彦珈琲では実際にCOEの優勝豆をオークションで落札し、ヤヴァと同様に販売しています。
猿田彦珈琲では約300種類の豆を取り扱っていますが、ほとんどは生産者から直接買い付ける「ダイレクトトレード」で仕入れ、品質、味わいを確かめています。
また、農家が持続可能なコーヒー栽培をするために必要な利益を還元しています。
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時代はフォースウェーブへ
現在は次の「フォースウェーブ」が始まっていますが、その定義はまだ曖昧です。
1つの特徴は、自宅で楽しむコーヒーです。サードウェーブを経て、自分で生豆を選び、焙煎から楽しむ人たちも増えています。
もう1つの特徴は、高品質・高付加価値のスペシャルティコーヒーが多くの人に親しみやすくなることです。
スペシャルティコーヒーは「生産者の利益も確保する」という発想のもと、こだわりを持って提供する焙煎業者・意識の高い消費者によって成り立ってきました。
しかし、その流通量はコーヒー市場全体で見るとわずか5%です。
しかしフォースウェーブでは、コーヒーマシンの進化やレストランでの提供など、スペシャルティコーヒーがより身近になっていくと予想されています。
また、フォースウェーブでは生産者がコーヒーのトレンドに影響を与えるようになっています。
例えば、世界コーヒー生産者フォーラムなどのオンラインイベントにより、生産者が対等なプレーヤーとして発言できるようになりました。
協同組合が加工場を作って、生産地ブランドを立ち上げたり、国内の消費者に直接販売したりなど、新しい流通も生まれています。
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