コーヒーは世界中で欠かせないものになっています。わたしたちが日本で口にするコーヒーも、ほとんどはコーヒー生産国から輸入されたものですが、どの国でどれくらい生産されているかご存知でしょうか?
この記事では、2023年1月20日に発表された「コーヒー生産国ランキング2021」トップ10をご紹介します。
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世界のコーヒー豆の多くはコーヒーベルトに属する国で生産される
コーヒー豆の生産地と聞いて、どの国を思い浮かべますか?
ブラジル、コロンビア、グアテマラはコーヒー豆の生産量が多いのでご存知の方も多いのではないでしょうか。
しかし、コーヒー豆は世界中の多くの国や地域で栽培されています。
コーヒーの栽培に適した地帯は、赤道を挟んだ北回帰線と南回帰線の間にある熱帯地方で、中南米、アフリカ、アジアが主な生産地です。
北緯25度から南緯25度の間に限られており、このエリアを「コーヒーベルト」と呼びます。
世界のコーヒーの大半は、コーヒーベルトに属する生産国で生産されています。
コーヒーベルトについて、詳しくはコーヒーベルトとは?属する国とそれぞれの特徴をバリスタが解説をご覧ください。
コーヒーを生産できる地域は限られてる
コーヒー豆の元となる「コーヒーノキ」は、土地や気候など生育に必要な条件があるため、栽培できる地域はある程度限られています。
上の画像のように、コーヒーの木は赤道付近に密集しています。この地域は標高が高く、年間を通して温暖な気候です。降雨量も適度で、コーヒーの木を育てるには理想的な場所です。
コーヒーノキについて、詳しくはコーヒーノキとは?1本から採れる豆の量などをバリスタが解説をご覧ください。
コーヒーベルトに属する国の中にも生産量が突出した国がある
各コーヒー生産国では、高品質なスペシャルティコーヒーからコスパに優れたコモディティコーヒーまで、世界の多様なコーヒーニーズに応えていますが、中でもコーヒー栽培に理想的な環境を持ち、コーヒー生産量が突出した国がいくつか存在します。
スペシャルティコーヒーとは
スペシャルティコーヒーとは、味や香りなどの決められた評価基準をくぐり抜け、コーヒー豆の生産体制や工程、そして品質管理が徹底された高品質のコーヒーのこと。
コモディティコーヒーとは
コモディティコーヒーとは、スーパーマーケットなどで低価格で販売されるコーヒー豆のこと。商品先物取引によって価格が決定され、取引される。別名「コマーシャルコーヒー」とも呼ばれる。
では、具体的にコーヒー生産量が多い国はどこなのでしょうか。
世界のコーヒー豆生産量ランキング(2023年1月発表)
2023年1月20日に発表された「世界のコーヒー豆生産生産量量ランキング2021」によると、世界のコーヒー総生産量は9,917,258トンで、前年の10,688,153トンから77万トン以上減少しました。
世界のコーヒー生産量ランキングTOP10の国について、前年とコーヒー生産量との比較を交えながら、コーヒー生産量の推移についても見ていきましょう。
ランキングの順位は以下の通りです。
- 生産量1位.ブラジル
- 生産量2位.ベトナム
- 生産量3位.インドネシア
- 生産量4位.コロンビア
- 生産量5位.エチオピア
- 生産量6位.ホンジュラス
- 生産量7位.ウガンダ
- 生産量8位.ペルー
- 生産量9位.インド
- 生産量10位.グァテマラ
生産量第1位.ブラジル
世界のコーヒー豆生産量ランキング第1位は、コーヒー大国としても有名な「ブラジル」です。
ブラジルは世界第5位の国土面積を誇り、その広大な国土のほとんどがコーヒーベルトに属しています。
コーヒー生産の機械化が進んでおり、世界のコーヒーのおよそ3割を占める圧倒的な生産量を誇るコーヒー大国。ブラジルの干ばつや霜害はコーヒー業界に大きな影響を及ぼすため、コーヒー市場価格の高騰に直結することは常識となっています。
2021年のブラジルのコーヒー生産量は、前年比マイナス70万トン以上でした。近年のコーヒー価格の高騰は、ブラジルに起因するところが大きいと言えます。
- ブラジル 国土面積:8,515,767km2
- 2021年の生産量:2,993,780トン(2020年:3,700,231トン)
- 世界のコーヒー生産量の30.2%(2020年:34.6%)
ブラジルコーヒー豆の特徴は、苦味と酸味のバランスが良く、酸っぱいコーヒーが少ない「飲みやすさ」にあります。
詳しいコーヒー豆の風味や味わいについては「ブラジルコーヒーの特徴を元バリスタが解説」をご覧ください。
また、実際に飲んだ本当に美味しいブラジルのコーヒー豆は「ブラジルコーヒーおすすめランキング10選!実際に飲んだおいしい豆を厳選」でランキング形式で紹介しています。
生産量第2位.ベトナム
世界のコーヒー豆生産量ランキング第2位は、ロブスタ種のコーヒー豆の生産地として有名な「ベトナム」です。
ベトナムは、近年急速に生産量を伸ばしているコーヒー生産国です。
ベトナムは世界でもっともロブスタ種のコーヒー豆を生産している国です。ロブスタ種のコーヒー豆は缶コーヒーやインスタントコーヒーなどのブレンドの原料として使われています。また、一部のエスプレッソ用コーヒー豆にもブレンドされています。
ベトナム産のコーヒーは店頭ではあまり見かけませんが、日本においても、実はブラジルに次いで2番目に多く輸入されています。*1
- ベトナム 国土面積:331,212km2
- 2021年の生産量:1,845,033トン(2020年:1,763,476トン)
- 世界のコーヒー生産量の18.6%(2020年:16.5%)
ベトナム産のコーヒー豆は、ロブスタ種ならではの強い苦味と香ばしさが特徴です。
練乳や牛乳、ヨーグルトなどとも相性が良いので、自宅でベトナムコーヒーを楽しんでみるのもおすすめです。
コーヒー豆の特徴や風味、味わいは「ベトナムコーヒーの特徴や入れ方を紹介!練乳やインスタントで楽しもう」で紹介しています。
生産量第3位.インドネシア
世界のコーヒー豆生産量ランキング第3位は、日本でも人気のコーヒー豆「マンデリン」を生産する「インドネシア」です。
インドネシアは、ベトナムに次ぐアジア第2位のコーヒー生産国です。
古くからコーヒー生産が盛んでしたが、19世紀後半には「さび病」が蔓延し、壊滅的な打撃を受けました。
その後、さび病に強く育てやすいロブスタ種のコーヒーを中心に生産するようになり、前年4位から3位に浮上しました。
コーヒー豆の生産量はほぼ横ばいですが、南米のコロンビアやブラジルでアラビカ種が不作だった影響が感じられる結果です。
- インドネシア 国土面積:1,904,569km2
- 2021年の生産量:765,415トン(2020年:773,409トン)
- 世界のコーヒー生産量の7.7%(2020年:7.2%)
大小1万以上の島々からなる国のインドネシアでは、栽培される島ごとにコーヒー豆の個性が感じられます。
ロブスタ種だけでなく、スマトラ島で生産されるコーヒー豆「マンデリン」や、スラウェシ島のコーヒー豆「トラジャ」といった高品質なアラビカ種も有名です。
実際に飲んだ美味しいインドネシアコーヒー豆は「実際に飲んだインドネシアコーヒーおすすめランキング10選」でランキング形式で紹介しています。
生産量第4位.コロンビア
世界のコーヒー豆生産量ランキング第4位は、高品質なコーヒー豆の生産地「コロンビア」です。
コロンビアは、長らく世界第2位のコーヒー生産国でしたが、近年はベトナムにその座を譲り、2021年にはついに4位に転落してしまいました。
コロンビアを南北に縦断するアンデス山脈の丘陵地帯の麓は標高差が大きく、年間を通してコーヒー豆が収穫されます。
日本の約3倍の面積を持つ国土の大部分でコーヒーが栽培されるコロンビアでは、コーヒー産業は経済の大きな柱ですが、コロンビアで栽培されているアラビカ種は気温や降雨量などの影響を受けやすく、病害に弱いコーヒー品種です。
2021年は、それが色濃く反映された結果になりました。
- コロンビア 国土面積:1,141,748km2
- 2021年の生産量:560,340トン(2020年:833,400トン)
- 世界のコーヒー生産量の5.7%(2020年:7.8%)
コロンビアのコーヒー豆は、栽培エリアによってフレーバーが異なるのが特徴です。
スペシャルティコーヒーの産地としても有名で、日本で有名な「エメラルドマウンテン」もコロンビア産のコーヒー豆です。
コーヒー豆の特徴や風味、味わいは「コロンビアコーヒーの特徴とおすすめ」で紹介しています。
生産量第5位.エチオピア
世界のコーヒー豆生産量ランキング第5位は、 フルーティーなコーヒー豆「モカ」「イルガチェフェ」「ゲイシャ種」を生産する「エチオピア」です。
エチオピアはコーヒー発祥の地として知られています。
アラビカ種はエチオピアが原産と言われ、栽培されているコーヒーは全てアラビカ種で、90%は森林などに自生する「オーガニックコーヒー」です。
コーヒー豆の生産量は前年より減少していますが、エチオピアには未開の地に野生するコーヒーの木が多く、生産者のほとんどは零細農家です。
そのため、正確な生産量を把握することが難しい現状にあり、生産量は非公式統計としての数値となります。
- エチオピア 国土面積:1,104,300km2
- 2021年の生産量:456,000トン(2020年:584,790トン)
- 世界のコーヒー生産量の4.6%(2020年:5.5%)
エチオピアのコーヒー豆は、フルーティで柑橘系のフレーバーが特徴です。
先述のとおり、一部のエチオピアコーヒーは「モカ」という名前で販売されています。浅煎りに焙煎すると爽やかでフルーティーな酸味、中煎りではワインのような風味と強い甘みを感じられるなど、焙煎度合いにより異なる個性を楽しめます。
また、本当に美味しいエチオピアコーヒー豆を「実際に飲んだエチオピアコーヒーのおすすめ10選!本当に美味しい豆はこれ」でランキング形式で紹介しています。
生産量第6位.ホンジュラス
世界のコーヒー豆生産量ランキング第6位は、飲みやすいコーヒー豆を生産する「ホンジュラス」です。
ホンジュラスは、国土面積は日本の3分の1ほどですが、8割近くが山岳地帯で、コーヒー生産は国の全土で行われています。
ホンジュラスで栽培されるコーヒーのほとんどはアラビカ種で、一時期さび病の深刻な被害を受けましたが、国を挙げての復興が実を結び生産量を伸ばしています。
ホンジュラスコーヒー協会(IHCAFE)による品質管理、生産者への研修によってコーヒー豆の品質が向上し、美味しいスペシャルティコーヒーも多く産出されています。
- ホンジュラス 国土面積: 112,492km2
- 2021年の生産量:400,674トン(2020年:364,552トン)
- 世界のコーヒー生産量の4.0%(2020年:3.4%)
ホンジュラスのコーヒー豆のほとんどは、ウォッシュド(水洗式)という方法で加工・精製されていて、雑味のないクリーンな味わいが楽しめます。
生産地ごとに豊かな個性があり、世界で最も有名なコーヒー豆の品評会「カップ・オブ・エクセレンス」入賞のコーヒー農園が多いのも特徴です。
実際に飲んだ本当に美味しいホンジュラスコーヒー豆は「実際に飲んだホンジュラスコーヒーおすすめランキング4選」でランキング形式で紹介しています。
生産量第7位.ウガンダ
世界のコーヒー豆生産量ランキング第7位は、高品質で美味しいロブスタ種も生産する「ウガンダ」です。
ウガンダは「アフリカの真珠」と呼ばれるほど自然が豊かで、ロブスタ種の発祥の地でもあります。
ウガンダのコーヒーのほとんどはロブスタ種で、エチオピア同様、野生のロブスタ種が現在も自生しています。
赤道直下に位置し、年間を通してコーヒー栽培が行われています。生産量は前年から8万トン以上も増加し、9位から7位へと順位を上げました。
- ウガンダ 国土面積:241,550km2
- 2021年の生産量:374,760トン(2020年:290,668トン)
- 世界のコーヒー生産量3.5%(2020年:2.7%)
一部のウガンダコーヒー豆は、 標高が高い場所で栽培されているため、ほどよい酸味を含み、口当たりがマイルドな特徴があります。その滑らかな味わいはヨーロッパで人気があり、エスプレッソ用のコーヒー豆にブレンドされることも多いです。
コーヒー豆の特徴や風味、味わいは「ウガンダコーヒーの特徴|味や香り、おすすめコーヒー豆も紹介」で紹介しています。
生産量第8位.ペルー
世界のコーヒー豆生産量ランキング第8位は、世界一のフェアトレードコーヒー生産国「ペルー」です。
マチュピチュやナスカの地上絵で有名なペルーは、国土を走るアンデス山脈の地形の特徴を生かした高地栽培が行なわれています。
2010年に全米スペシャルティコーヒー協会(SCAA)の品評会で1位を獲得すると、ペルーでのコーヒー栽培はますます盛んになりました。
コーヒー農園の多くは数ヘクタール程度の家族経営のため、インフラ整備が行き届きにくく生産量が安定しない点が課題ですが、2021年には6位から8位に順位を下げました。
- ペルー 国土面積:1,285,216km2
- 2021年の生産量:365,582トン(2020年:376,725トン)
- 世界のコーヒー生産量の3.7%(2020年:3.5%)
ペルーのコーヒー豆は、柑橘系の酸味と優しい甘みが特徴で、栽培地域による味わいの変化が楽しめます。
先述の通り、フェアトレードコーヒーの生産量は世界一を誇り、世界第2位のオーガニックコーヒー生産国でもあります。
コーヒー豆の特徴や風味、味わいは「ペルーコーヒー豆の特徴」で紹介しています。
生産量第9位.インド
世界のコーヒー豆生産量ランキング第9位は、重厚でまろやかな「モンスーンコーヒー」が有名な「インド」です。
インドは世界第7位の国土面積を誇り、インド南部の大半がコーヒーベルトに属しています。
紅茶の印象が強いインドですが、実は世界有数のコーヒー生産国でもあります。
インドのコーヒー豆のほとんどはヨーロッパへ輸出されているため、日本ではあまり馴染みがありませんが、生産量は前年に比べて35万トン以上も増加しています。
- インド 国土面積:3,287,263km2
- 2021年の生産量:334,000トン(2020年:298,000トン)
- 世界のコーヒー生産量の3.4%(2020年:2.8%)
インドのコーヒー豆は、マイルドな甘みと複雑でコクのある風味が特徴です。
主に、酸味の少ないコーヒーが好まれるヨーロッパなどに輸出されており、モンスーンコーヒーなどコアなファンが多い銘柄もあります。
コーヒー豆の特徴や風味、味わいは「インドコーヒー豆の特徴」で紹介しています。
生産量第10位.グァテマラ
世界のコーヒー豆生産量ランキング第10位は、世界屈指の品質と言われ、日本でも人気の「グァテマラ」です。
グァテマラは、国土面積は日本の3分の1ほどですが、約22万トンの生産量を誇る中米を代表するコーヒー生産国です。
標高が高く、昼夜の寒暖差や火山性の土壌がコーヒー栽培に適していることに加え、グァテマラ国立コーヒー生産者協会「ANACAFE(アナカフェ)」という専門機関を設立し、品質と生産量の向上にも努めています。
国をあげて高品質なコーヒー豆を輸出していることで注目を集めています。
- グアテマラ 国土面積:108,889km2
- 2021年の生産量:226,700トン(2020年:225,000トン)
- 世界のコーヒー生産量の2.3%(2020年:2.1%)
グアテマラ産のコーヒーは、重厚なコクと優しい酸味、フルーティーな香りが特徴です。
全体の味のバランスが良く、焙煎度合いを選ぶことで苦味と酸味のバランスを自分好みにコントロールできます。
実際に飲んだ本当に美味しいグァテマラコーヒー豆は「本当に美味しいグアテマラコーヒーおすすめ10選!特徴や選び方も紹介」でランキング形式で紹介しています。
コーヒー消費量の多い国と、生産量の多い国は違う
コーヒーの生産量が多い国はコーヒーの消費量も多いように思われがちですが、実はそうではありません。
こちらの図が、世界のコーヒー消費国トップ10です。
EUとアメリカのコーヒー消費量が、コーヒー大国ブラジルより多いことがわかります。
コーヒー生産量トップ10の国のうち、消費量でもトップ10に入っているのはブラジル、インドネシア、エチオピア、ベトナムのみです。
日本のコーヒー消費量
日本のコーヒー消費量は世界第4位ですが、人口を考慮した「一人当たりの消費量」に換算すると第7位になります。*2
一人当たりのコーヒー消費量がもっとも多いのは、北欧のノルウェーです。
日本の消費量はノルウェーと比較すると半分以下になりますが、世界でも有数のコーヒー消費国であるということはわかります。
世界で生産される美味しいコーヒー豆を楽しもう!
2023年に発表されたコーヒー生産量ランキングを詳しく見ることで、異常気象やさび病の蔓延がコーヒー生産国に大きな影響を与えていることがわかります。
ここ数年のコーヒー価格高騰の背景には、アラビカ種の収穫量減少があり、コーヒー生産国では国をあげてその対策に取り組んでいます。
そうして、世界中の生産国から日本に届けられるコーヒー。背景を知ることで、ぜひより深く味わってくださいね。
ちなみに、このブログではコーヒーの未来を脅かす「さび病」について、わかりやすく解説しています。
詳しくは「コーヒーのさび病とは?コーヒーの木の病気について解説」をご覧ください。
また、地球温暖化がこのまま進めば、コーヒーの生産量は減少し、美味しいコーヒーが飲めない日々がやってくる深刻な「コーヒーの2050年問題」についても、わかりやすく解説しています。
参考文献
記事全体 世界のコーヒー豆 生産量 国別ランキング・推移 2020年、2021年(2023年8月20日閲覧)
記事全体 Wikipedia|国の面積順リスト(2023年8月20日閲覧)
*1 *2 味の素AGF|世界と日本のコーヒー豆事情(2023年8月20日閲覧)